高収入の医師たちがあえて「起業」を選ぶ理由

閉鎖的な医療界と一般社会の溝を埋める

金沢八景駅のトリックアート階段。見るために必然的に階段を上る仕組み

難関受験をくぐり抜け、長い下積みを経て、誰もが認める国家資格を得る医師。たとえ勤務医であっても、その多くが高い収入を獲得し、将来にわたって安定した仕事が保障されている。開業で成功した医師は豪邸に住み、高級輸入車に乗るなど、庶民から見てうらやむほどの生活を送る。

そんな彼らの中にビジネスを立ち上げる人、つまり起業家となる人がいる。いったい、なぜなのか。

起業する医師の多くが抱える問題意識

「昔の医師の起業家といえば、ドロップアウト組のイメージがあった。今は東大医学部卒でも起業する人が増えている」。産婦人科医の宋美玄氏は、医師たちの間で“起業”する動きがじわじわと広まっていると語る。

起業する医師の多くが抱える問題意識が、「一般社会と医療界との溝」である。

メドピアの石見陽社長はアントレ・ドクターの先駆け(撮影:梅谷秀司)

医師向けコミュニティサイトを運営するメドピアの石見陽社長は20代のとき、循環器内科でカテーテル専門医を目指していた。しかし、所属先の東京女子医科大学で発生した女児の死亡事故をきっかけに考えが変わる。

「病棟が、からっからになりました」。事故は後にカルテ改ざん事件へと発展。報道が過熱し、患者が病院から消えていった。にもかかわらず、医師たちは高級輸入車を乗り回している――。そんな世間のイメージと、寝る間も惜しんで働くハードな仕事とのギャップにも悩んだという。

「そんなとき、同じような悩みを持つ医師を(SNSの)ミクシィで見つけました」(石見氏)。ミクシィを観察していると、普段は閉鎖的な環境にいる医師たちが悩みを打ち明けながら、意見を交わし合っていた。医師を相手にしたコミュニティサービスは需要があるかもしれない。その気づきが起業のきっかけだった。

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