ドナルド・トランプ米大統領は、6月1日、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」からの離脱を正式に発表した。
昨年の選挙戦中から地球温暖化は「デマだ」とか、「中国のでっち上げだ」とか、いろいろ暴言を吐いていたが、最終的に「パリ協定」離脱の決意を固めた本当の理由は何か。トランプ氏の発言などを基に、その舞台裏を大胆に読み解いていく。
なお、以下の分析はウォール街でよく行われる「市場からの見立て」を開示するものである。「事実であるか事実ではないか」を突き詰めるものではないことを冒頭の段階で付言しておく。
核戦争こそ人類生存環境破壊につながる
トランプ氏のハラの中にあるのは、「究極の地球環境破壊は核戦争であり、いま米国が取り組むべきは、暴走する北朝鮮の核の脅威から人類の生存環境を守ること」だろう。そのステップとして、まず北朝鮮の核・ミサイル開発をやめさせ、核の脅威を防ぐことが重要で、「北朝鮮の核の暴走脅威こそ究極の地球環境問題」という認識がある。
実は、この背後にある「北朝鮮を含む核戦争の防止こそ、地球環境問題より短期的には重要な、究極の地球環境問題」という概念は、米大統領選挙期間中の昨年9月にトランプ大統領絶対阻止を望むアメリカの環境問題専門家たちが明らかにした視座だ。地球温暖化も環境問題として重要なテーマだが、それ以上に核戦争の防止を第一義的にしなければ、取り返しのつかない人類生存環境破壊につながる、というものだ。
その米国環境問題専門家たちの懸念が説得力をもった9月という時期は、米大統領選挙戦の終盤にさしかかったときだった。地球温暖化を否定するばかりか、核戦争も最後の手段として辞さないような発言を繰り返していたトランプ候補に対する警戒感が、環境問題専門家の間にも広がっていた。
もしトランプ候補が大統領になろうものなら、地球温暖化対策もへったくれもない。彼は究極の地球環境破壊というべき核戦争をしかねない。そんな大統領の登場を阻止することのほうが地球温暖化問題よりもっと重要だ、というレトリックのためのレトリックを、当の環境問題専門家たちが語っていたのだ。
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