そのクシュナー氏やイヴァンカ氏が、「パリ協定」離脱に最終的に従ったのは、米国環境問題専門家たちの「北朝鮮の核暴走脅威阻止こそ究極の地球環境テーマ」という認識を逆手に取って、「パリ協定」離脱を進めるトランプ戦略を理解したからだろう。
さらに、「パリ協定」そのものは、オバマ前大統領の最後のレジェンドとして、米議会で奇跡的に承認されたものだった。アメリカ国内では環境規制をめぐって賛否両論あり、意見は激しく対立している。それはプルイットEPA長官が就任するに当たって、議会承認の投票がぎりぎりだったことに如実に表れている。
「パリ協定」では究極の地球環境破壊は防げない
「パリ協定」はオバマ氏の最後のレジェンドだが、実にオバマ前大統領には、米メディア好みのレジェンドがオンパレードだ。オバマケア(医療保険制度)から始まり、「核なき社会」のノーベル平和賞、環太平洋パートナーシップ(TPP)問題などと続き、最後の「パリ協定」はメディアの後押しで、やっとのことで米議会での批准が得られた。
そのオバマ氏のレジェンドについては、「核なき社会」のノーベル賞は別にして、そのことごとくをトランプ氏は潰しにかかっている。すでにTPPからは離脱し、オバマケアでは代替法案を提案し、今回、「パリ協定」離脱を決めた。トランプ氏の反オバマ戦略は反レジェンド戦略でもある。
「パリ協定」離脱については、そもそも米国連邦憲法には環境権の記載はない。州によっては環境権を州憲法で規定している。ということは、「パリ協定」に相当する環境規制の権限の大きな部分を州が握っていることになる。「パリ協定」は連邦議会でかろうじて承認されたが、それは“オバマ・レジェンド”のためではあっても、環境規制によって経済的ダメージを被るトランプ支持派の多数のためにはならない、という理屈である。
アメリカの法体系全体からすると、「パリ協定」に託したオバマ氏の思い入れは、「合衆国でもあるが、合州国でもある」といわれる、アメリカの州レベルの支持が脆弱極まりないということになる。
オクラホマ州の司法長官を務めたプルイットEPA長官は、これまで炭鉱労働者が多い各州を束ね、環境規制反対派を組織化してきた腕利きの政治オーガナイザーでもある。移民規制などトランプ氏が発令した大統領令に反対している各州の「反トランプ連合」の政治勢力にも対抗できる実力を十分に備えている。トランプ大統領にとって頼りになる閣僚の1人だ。
「パリ協定」離脱によって、アメリカの世界リーダーとしての指導力は低下し、代わって中国の外交力が増したと、世界中のメディアが報じている。はたしてそうか。
「パリ協定」では、究極の地球環境破壊につながる北朝鮮の核暴走脅威は防げない。いまのところ、「パリ協定」離脱で中国の習近平国家主席に花を持たせておくが、北朝鮮の核・ミサイル開発放棄に向けた、本当の勝負はこれからだ。そこにこそ、“ディールアーティスト”トランプ氏の真骨頂がある。
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