就活で6月までに選考が終わるとは限らない 内定を出した企業の顔ぶれには偏りがある

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たとえば、志望動機や自己PRなどを書面にまとめて、志望する企業に提出する「エントリーシート」。この提出は、2017年卒では4月末から5月上旬が1次締め切りのピークでしたが、今年は3月末にひとつのヤマがありました。

また例年、エントリーシートの提出と前後して行われる、SPIなどの適性検査。これも今年は3月中に受けるよう学生に求める企業が目立ちました。このように2018年卒の採用戦線では、企業から学生へ畳みかけるようなアプローチが特徴です。

これらは、昨年2017年卒の採用活動の中で、内定を出すに至る途中段階で学生が離脱してしまう、いわゆる“選考辞退”に苦い思いをした企業が少なくなかったことによるものと推察されます。

企業は自社で活躍しそうな学生をいち早く見つけ出し、その学生がよそ見をする隙を与えないよう、さまざまな工夫を凝らして自社との接点を増やしています。そして学生が自社への志望動機を高められるよう、個々人の関心事に照らしたきめ細かな情報提供を行っているのです。

理系学生や大学院生は内定率が高い

インターンシップが盛んになったことも、就職戦線を足早にしている1つの要因でしょう。採用直結を目的としている企業は、インターンシップ実施企業全体の1割弱と、まだまだ限定的です。

しかし、自社やその業界、主な仕事の理解を目的とする企業は、7割前後に至ります(就職みらい研究所調べ)。インターンシップを行った企業から見れば、それに参加した学生は、就業体験を通じて自社や仕事への理解を深めており、採用活動で改めてイチから説明する必要のない、言わば“話が早い”存在です。

すでに相思相愛な状態がほぼ形成されているとなると、6月まで待つことは双方にとって合理的ではなく、「内定出し」が早期化するのです。また大学教員も「早めの内定出し」を推奨する傾向があります。現在、就活に臨んでいる大学生・大学院生の多くは、すでに卒業研究・修士論文などに取り組み始めています。

こうした学生生活の集大成ともいえる活動に、できるかぎり支障を来さないよう、就活を早期に終えてほしいと願う教授などから企業に対して、早期の内定付与を求める声もあるようです。実際、5月1日時点の大学生の内定率は、文系よりも理系のほうが10ポイントほど高く、また大学院生のそれは41.9%にも上っています。

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