こうして生まれた起業家が「3年以内に株式公開します」「世界中にオフィスを構えます」と将来の夢を語る起業家ブームだったのです。なかでも印象的だったのは「21世紀を代表する会社を目指します」と語っていたサイバーエージェント社の藤田晋社長。取材した当時社員は数人でしたが、当時と現在で一貫した夢を語っていることに強い思念を感じます。すべての起業家が成功したわけではありませんが、楽天やDeNAなど日本経済に大きく影響をもたらすような会社も生まれました。新卒で入社した〇〇商事、△△銀行などを辞めて起業すること……大企業を経由して起業家になることは魅力的なキャリアの1つとして認知されるようになりました。
若手社員のキャリアに関する意識は保守的だ
では、現在はどうなのか? 大企業経由の起業というキャリアについて現状の課題をご紹介したいと思います。
そもそも、若手社員のキャリアに関する意識は全体的には保守的と言われています。筆者が『アントレ』の編集長を離れた2005年以降には、リーマンショックや東日本大震災などで経済が大きく低迷。周囲で起業家を称える風潮が一気に冷めていきました。
さらに、求人倍率も低迷。こうした不安定な状況で学生時代を過ごしてきた若手社員は将来に対して慎重な姿勢で臨むようになりました。そうした背景もあり終身雇用の保証を望んでいる若手社員は約7割、さらに年功序列を望む社員が約4割。将来に対する見通しが不透明なので、無理せず手堅いキャリアを望む人が大半であるのが実態なのです。まずはこの前提を理解しておく必要があります。
そのような状況にもかかわらず、大企業経由で起業した元若手社員が筆者の周辺にたくさんいます。
たとえば、家事手伝いを提供している女性起業家は、大手通信メーカーで3年勤務。その間に人脈と開業資金をつくり起業しました。起業を前提に大企業に入社したようです。
あるいは大手流通会社に5年勤務した後にクラウドファンディング関連の会社を立ち上げた起業家も同様で、入社する時期には起業するというプランを温めていたとのこと。
こうしたイマドキの若手起業家、筆者は過去の起業家たちと2つの点で違いを感じます。1つ目は起業を意識した時期。学生時代という早い段階で起業を志し、それに向けてどの大企業で経験を積むべきかまで考えていた人が多いのです。
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