なぜか? 「バッグの底にビョウが打ってあるものが多いことでもわかるように、バッグはそもそも床に置くことを前提につくられているもの。コートや靴と同じく、本来“外”で使うものです」。こう語るのは、『図解 社会人の基本 マナー大全』著者で、現代礼法研究所主宰の岩下宣子さん。
靴やコートをお客さまのテーブルの上に置いたら、「汚い」「失礼だ」と思われても仕方がない。バッグの場合も、それと似た行為になるわけだ。「僕はかばんを床に直接置いたりしないので……」という人がいるかもしれないが、こうしたマナーのポイントは「相手がどう思うか」であることを忘れてはいけない。
商談などの席では、バッグは自分の足元、イスの横などに置いておくのがスマート。アポを取った相手が現れるまでに、すっと床の上に置き、名刺入れなどを取り出して待機――。それが基本所作となる。
「自立しない」バッグを選んではいけない
「バッグを床に置く」といっても、横向きに寝かせて置くのは避けたい。見た目がいかにもだらしないし、そもそも接地させるべきはバッグの「底」に限る。大切なビジネス書類を入れるビジネスバッグを、無造作に床に横置きするのは、「雑な仕事をしそうだ」と無駄にネガティブなイメージを与えてしまいそうだ。
「そのため、ビジネスバッグは“自立“するマチがしっかりとあるタイプを選ぶのがいいでしょう」と言うのは、松屋・銀座の紳士MD課バイヤーで、ビジネスバッグに詳しい黒岩真一さん。「ナイロン製ビジネストートなど、軟らかくて自立しにくいタイプを使っているのであれば、中に厚めのファイルなどを入れて自立しやすいようにするといいでしょう。それをいすの脚などにもたれかけさせれば、ぺったりと床に寝ることはありません」(黒岩バイヤー)。
肩掛け用のショルダーストラップが付いたツーウェータイプのビジネスバッグや、はやりのビジネスリュックなどを使っている方も多いだろう。重さが分散され、使い勝手がいいのがこうしたバッグの特徴だが、取引先のオフィスに入る前には、肩掛けをやめて手持ち用のハンドルに持ち替えたい。
「肩掛けをしていると、ジャケットなどが着崩れて、どうしてもだらしなく見えがちですからね。取引先にそうした姿を見せるときちんとしていない印象を与えてしまうので、普段はともかく、訪問先では、手持ちに替えておくのがいいでしょう」(黒岩バイヤー)。受け付けする前にコートを脱いでおくのと同様に、バッグも手持ちに替えておきたい。
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