店舗内に”住み込む”ほどのマックバカ 外食業界最強の出店システム"マックジス"とは?

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外食業界最強のシステム

マクドナルドには外食業界最強といわれるMcGIS(マックジス、マクドナルド地理情報システム)というプログラムがある。GIS(geographic Information system)という地理情報システムをマクドナルドの独自仕様に開発したものだ。

電子地図の上に、国勢調査や商業統計、そしてマクドナルドの過去の出店データを組み合わせることで、「出店したらどのくらいの売り上げが立つのか瞬時に計算できる」(松下氏)プログラムだ。このプログラムがあったからこそ、人手をかけず、1990年代後半に年間300〜400店の高速出店が可能となった。

松下氏がマクドナルドを辞めてから気づいたことは、マクドナルド以外の会社が必ずしも高い出店基準を持っているわけではないということだ。後に転職するグリーンハウスフーズでは、過去に800店を出したが、そのうち400店が閉店に追い込まれている。

グリーンハウスのように出店ノウハウを持っていない会社は、物件を見つけると、家賃と設備投資が算出できるので、そこから投資回収するためには、どの程度の売り上げが必要なのかという計算をする。「この必要な売り上げ期待値がいつのまにか、その店の予算になっているケースが多い」(松下氏)。マクドナルドの場合はMcGISを使い、マーケットの状況と過去の出店データから、新店を出した時の売り上げを予想。そこから家賃交渉に取りかかり、投資回収期間を計算する。

出店戦略にかかわったことでもうひとつ見えてきたことがある。なぜそこに店舗があって、本当の顧客は誰なのかという店舗属性を知るということだ。

松下雅憲(まつした・まさのり)
ピープル&プレイス 代表取締役 1958年生まれ。4年間のアルバイトを経て、1980年に日本マクドナルド入社。1983年に店長就任後、西日本中心に担当。2005年にグリーンハウスフーズ入社、06年に同社執行役員を経て、2012年より現職。好きなハンバーガーはアメリカへのあこがれを感じるクォーターパウンダー。

マクドナルドに限らず、外食業の場合、都心の店と郊外の店では利用する時間帯やニーズが違う。都心の店であればコーヒーを買ったり、時間があるからふらっと立ち寄ることができる。しかし郊外店の場合は、週末に家族客がお昼を食べに来るという明確な目的を持っている場合が多い。

この立地に応じたニーズの違いを店長が理解することが重要だ。「客層が違えば、お客様を集めるために何をすべきかは決まってくる」(松下氏)。都心のようにふらっと立ち寄る機会来店が多い立地ではクーポン券を配って、呼び込みをすれば集客することができる。郊外の場合は、家族客に毎週来てもらうために、QSC(注:クオリティー、サービス、クレンリネスの頭文字で飲食店の基本姿勢)を高めて、不快な思いをさせず、リピート率を高めることが重要になる。「クーポンにQSCなど全部やることはもちろん大事だが、優先順位はおのずと違ってくる」(松下氏)。

出店戦略にかかわっていた頃、2004年に原田泳幸がトップに就任し、経営方針が大きく変わった。松下氏も大阪から東京の本社に異動し、McGISで全国を1000カ所に分けて、店舗をそのブロック内のどこに配置したら、エリアの売上高が最大になるかという全社の出店戦略の策定に携わることになった。

東京の本部で1年ほど、こうしたエリアマーケティングのノウハウを蓄積したことで、松下氏は店長が“ここに店がある理由”を理解して、行動を起こしたら売り上げは絶対に上がるという確信を持った。

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