偏差値38だった女子校が人気校になれた理由

東京の鷗友学園は「土いじり」で人を育てる

女性の労働という経験が鷗友の教育の出発点

植物を育てるのも子供を育てるのも本質は同じ

鷗友で園芸を教えて30年という木村亨先生に話を聞いた。

「生徒たちにとっては半分息抜きみたいな時間ですね」と笑う。

たしかに土いじりをしながら大声を上げ、だいぶストレス発散ができているように見える。

生徒たちが実習園に入るのは週1回だけ。残りの日は先生が畑の手入れをしなければいけない。

「植物は授業に合わせて成長してはくれませんから、毎日世話をしてやらなければなりません。今回、害虫にやられてしまったように、思いどおりにはいかないものです。でもそれが農作業ですからね。それを学んでもらえればいい。植物を育てるのも子供を育てるのも本質は一緒です。ちゃんと世話してあげなければいけないけど、手をかけすぎてもよくありません」

植物は授業に合わせて成長しないことからもさまざまなことを学びます

まだかまだかと成長を待ちわびてもなかなか思うようには育ってくれず、ちょっと目を離している間にあっという間に大きくなってしまう。放っておいては育たないが、過干渉もよろしくない。チンゲンサイをブロッコリーとして育てようとしてもダメだが、かといって多少間違っていてもチンゲンサイはチンゲンサイとしてちゃんと育つ。植物を育てることはまさに子育てそのものであり、そこから母性を学んでほしいという思いが、鷗友の園芸には込められている。

鷗友にはほかにも創立直後からの伝統を受け継ぐ科目がいくつかある。「リトミック」「聖書」「現代社会」「英語」などである。

いずれも実学の傾向が強い。これが初代市川校長が当時の日本の女性のためにアレンジした「リベラルアーツ」すなわち「人を自由にする技芸・学問」の伝統なのだ。現在、世界の教育は、STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育に代表されるように、まさに「合科」の方向に進化している。鷗友という学校が人気を盛り返したのは、時代の荒波の中でも教育理念を保持し続け、それに時代が追いついてきたからなのかもしれない。

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