「ゆとり教育」をきっかけに生まれた名物授業
戦後、中高一貫校体制になってから、1度も東大合格者数トップ10から外れたことがない唯一の学校でありながら、制服も校則もなく、徹底的に自由な校風で知られるのが、東京都港区にある麻布中学校・高等学校。約60年にわたって東大合格者数トップ10から外れたことがないにもかかわらず、1度もナンバーワンになったことがないというツメの甘さも麻布らしさだと卒業生たちは笑う。
校則がない代わりに不文律がある。「鉄げたでの登校」「麻雀」「授業中の出前」の3つが禁止。逆にこれくらいしか禁止事項がないという意味で、麻布がいかに自由であるかを象徴するものだ。
生徒も自由なら、教員も自由だ。大枠のカリキュラムはあるが、授業内容については教員の裁量の幅が大きい。学習指導要領に準じながら、独自の解釈を加えてつくられた麻布オリジナルの科目も多い。
いわゆる「ゆとり教育」の流れを受けて、「週5日制」を導入するか「総合的な学習の時間」をどう扱うかという議論の中で生まれたのが麻布オリジナルの「教養総合」という科目である。高1・2を対象に、土曜日の3〜4時間目に実施されている選択必修科目だ。毎年約60ものテーマが設定される。過去には「原子力利用と社会」「現代医療について考える」「気分はもう戦争?」「生命倫理とは」などが実施された。外部講師を招くことも多い。
その中に、すでに7年以上続く定番講座として、「<故郷(ふるさと)>四番をつくる」がある。講師は同校の卒業生であり、首都大学東京で教育社会学を専門にしている西島央准教授だ。
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