東大上位常連「麻布生」が本気で作詞する理由 唱歌「ふるさと」の歌詞に自分を映し出す

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ビルの谷間に蠢(うごめ)く社畜
揃(そろ)わされた足並みは足枷(あしかせ)という名の伝統
慰めに築き上げたは見えない関係
過ぎし夢に故郷

この歌詞に合わせて、プロの音楽家が曲をアレンジし、プロの声楽家が生徒たちの目の前で歌ってくれる。メロディは確かに唱歌<故郷>であるが、歌詞によって編曲がまったく違う。ジャズっぽいアレンジもあれば、オペラ風もある。プロの演奏と歌を聞いて、普段はクールを装う生徒たちも一様に感激の表情を見せる。10時間、日本を見つめ直し、自分と向かい合ったことへのご褒美と言ってもいい。

渋谷のスクランブル交差点の写真を映写し、「活気ある日本の歪み」であると喝破した生徒もいた。スカイツリーに主役を奪われた東京タワーを擬人化して、次のような歌詞を考えた生徒もいた。

  後輩の無礼腹立つ
  平成の不況むかつく
  大人たちは無責任
  未来のことは知らない

「さとり世代」と呼ばれることへの反論として、「努力をしても報われない社会」を批判する歌詞もあった。高度成長期やバブルを知っている大人たちは「努力は必ず報われる」と言うけれど、それは自分たちの努力の結果ではなくて、右肩上がりの経済成長のおかげだったのではないかという痛烈な批判が込められている。

ウソっぽい明るさは嫌だ

はっきり言って暗い歌詞ばかりだ。「日本」というより「自分」が多分に反映されている。思春期ならではの疑問、怒り、迷い、葛藤、不安……があからさまに表現される。もしかしたら、自画像を描くことに似ているのかもしれない。

生徒たちは日本を見つめなおし、自分と向かい合う

西島さんは、生徒たちを指して「君たちは将来の日本を背負う人たちです。新しい言葉を紡いでいってほしい。いつかこの授業を思い出してくれればいいと思います」と授業を結んだ。

発表の後、数人の生徒に聞いてみた。

「かなり批判的、風刺的な歌が多かったように思うんだけど」

「ウソっぽい明るさは嫌だなと思って……」

その答えを、「真剣に生きている証拠」と西島さんは評する。

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