東大上位常連「麻布生」が本気で作詞する理由 唱歌「ふるさと」の歌詞に自分を映し出す

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唱歌<故郷>は、大正3年(1914年)から小学校で歌われている。作詞は高野辰之、作曲は岡野貞一。歌詞はこうだ。

1 兎追ひし彼の山
  小鮒釣りし彼の川
  夢は今も巡りて
  忘れ難き故郷

2 如何にいます父母
  恙無しや友がき
  雨に風につけても
  思ひ出づる故郷

3 志を果たして
  いつの日にか帰らん
  山は青き故郷
  水は清き故郷

日本の美しい原風景が歌われている。現代でも心震わせる歌詞とメロディだ。だがそれは、100年前に長野県出身者が描いたものだ。21世紀を担う高校生なら、現在の日本や自分が住んでいる地域社会をどう描くだろうか。そこに挑戦してみようという授業である。そのためだけに、2コマの授業を5週にわたって展開する。都合10時間をかける。

最初の2コマでは「日本」と<故郷>のイメージをつくる。2週目は唱歌の特徴と人々に与える影響について整理する。3週目には今の高校生の考え方、社会の価値観、現代の日本や住んでいる地域社会の情景の特徴を表す言葉などを整理して、歌詞のコンセプトを抽出する。

4週目は、近いコンセプトをもった生徒同士で2〜3人のグループをつくって、話し合いながら歌詞を完成させる。5週目は発表。自分たちがつくった歌詞のコンセプトを発表し、それぞれの歌詞の内容に合わせてプロの音楽家がアレンジした<故郷>を聞く。最近では、文学史を参考にしながら、詩や唱歌に使われる言葉と社会背景の関係性に注目したり、最後に音楽家との意見交換を行ったりもしている。

「社畜」「足枷」「思考停止」…現代社会への痛烈な批判

10時間を費やして課題が完成する

発表の場では、各自が作成したプレゼンテーションのスライドが上映される。街に出て、現代の日本を象徴する情景だと思われる写真を撮ってきている。ある生徒は日本の伝統的な美しさと都会の人混みを対比させた。

ある生徒は高層ビルの夜景の写真を写しだし、「きれいに見えるかもしれませんが、この明かりの中には残業をしている人たちがいるんです。会社のために自分の時間を削ってまで働くようになってしまった人たちのことを現代用語では『社畜』と言います。これは偽りの美だと言わざるをえません」と指摘した。できた歌詞はこれだ。

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