職場の「イタい人」は論理思考が破綻している 問題は「コミュ力」以前にあった!

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こうしたタイプに近いと自覚のある人は、まず、他人の評価をあまり気にしすぎないよう自己暗示をかけてみましょう。世の中の人はあなたが思っているほどあなたを見下していたりはしません。また、「できる上司」は表層ではなく、中身をよく見ているものです。

そのうえで、「私はこう思います。なぜなら……」という典型的な論理展開の練習をするといいでしょう。論理展開の結論を支える根拠は、できればファクトか、多くの人の賛同を得やすい規範(例:他人に迷惑をかけないほうがいい)が望ましいです。多くの人間の賛同を得にくい「私はこうあるべきだと思う」というタイプの規範を振りかざしていては、いつまでもイタい人から脱却できません。

また、偏った根拠だけに立脚するのではなく、視野を広く持ち、バランスの良いピラミッド構造で筋道をしっかり立てることが効果的です。

これを繰り返すと、単にロジカルに話ができるだけではなく、「これを理解してもらうにはどういうファクトが必要だろう」と考えるようになります。空論ではなくファクト重視で何かを主張することは自己の評価にもつながり、それが自己肯定感の向上にも寄与します。しっかり論理思考の足腰を鍛えることで自分を高めましょう。

君子豹変せよ

最後に「他人の言うことを聞かない」への対策です。

これもさまざまな理由に起因するのですが、大きな理由のひとつに「コミットメントと一貫性」の心理があります。これは「一貫性のない人間だ」と見られるのを恐れ、いったん表明した意見や態度を変えることを嫌うという心理です。人間には多かれ少なかれこの心理は働きますが、度を超すと、他人の話を聞かず、自分の意見にこだわるイタい人となってしまいます。

精神的なストレスから自分を守ろうとする「防衛機制」という心理メカニズムも要注意です。これも行きすぎると、現実や他人の意見から目を背け、自分にとって都合の悪い話は拒否するようになります。

ここでも有効なのはメタ思考、そしてこれも広義の論理思考の一部である健全な批判的思考です。

「自分は必要以上に何かにこだわりすぎていないか? それに意味はあるのか?」

「バランス良くさまざまなファクトをもとに考えているか?」

こうした自問をしっかり行いましょう。

初期の段階でこれをサボってしまうと、ますます意見や態度を変えにくくなり、負のスパイラルに陥ってしまいます。いったんそれにはまると、そこから逃れることは容易ではありません。

目の前のちっぽけなプライドにこだわるのではなく、状況に合わせた態度変容こそがビジネスパーソンにとって大事なことだと理解すべきなのです。

今回は3つのパターンに関するヒントをご紹介しましたが、その他にもイタい人のパターンは多々あります。ただ、どのケースでも、典型的な落とし穴を知るとともに、自分や自分を取り巻く状況を客観的に眺めるメタ思考や、健全な批判的精神を持って自分の言動を確認することは非常に有効です。ビジネスパーソンとして良き人生を歩むためにも、ぜひこうしたことを励行してみてください。

嶋田 毅 グロービス経営大学院教授、グロービス出版局長

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しまだ つよし / Tsuyoshi Shimada

グロービス経営大学院教員、グロービス出版局長。東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計160万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。著書に『MBA 100の基本』『ビジネスで使える数学の基本が1冊でざっくりわかる本』『KPI大全』(以上東洋経済新報社)、『グロービスMBAミドルマネジメント』(ダイヤモンド社)など。経営戦略、テクノベート・ストラテジー、研究プロジェクトなどの講師を務めるほか、各所で講演なども行っている。

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