「内勤仕事は家庭と両立しやすい」は本当か 「営業職よりスタッフが楽」と信じる女性たち

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ある大企業の役員の方が、営業からスタッフに異動して「雑用ばかりしている気がする」と嘆く女性メンバーにアドバイスしているのを聞いていたことがあります。「スタッフの仕事は、誰かを輝かせることを考える仕事なんだよ。結果的に大きなものを動かすことはあるけれど、自分が前に立ちたいと思っているうちは何も動かせないんだ。自分が輝きたいと思うのなら、営業に戻ったほうがいい」。その言葉は、スタッフとして仕事をしたことがある私にとっても、とても共感できるメッセージでした。

営業は確かに、顧客のことを理解し寄り添い、自社との取引にメリットを感じてもらう仕事で、ある意味、顧客を輝かせるミッションを担っているわけですが、その成果は社内で「〇〇さんの仕事」と認識してもらいやすい傾向があります。そして、高い業績を上げれば、表彰を受けたりわかりやすく評価されたり、社内でも「売れている営業」と一目置かれやすい部分があると思います。そういった意味では、「自分自身が輝ける仕事」であるかもしれません。

黒子に徹し、「誰かを輝かせよう」とする仕事

一方で、バックオフィスのスタッフの仕事はとても地道だし、「自分色」を出すことを求められることが多いとは言えません。時に、営業経験がある人が、「スタッフ職が官僚的な判断ばかりして、現場をわかっていない」などと対立構造的に発言することがありますが、それこそスタッフ職の苦労がわかっていないなぁと思ってしまいます。その営業の個人にとっては「融通が利かない」と思うことでも、スタッフたちはその人を含めた組織全体がうまくいくように考え、下している判断なのであって、感情を押し殺してNOを伝えていることも多いはずなのです。社内で、心ない人に自分が悪く言われることもある程度は織り込み済みで、嫌われ役、損な役回りだと割り切っているケースもあるでしょう。あくまで黒子に徹しながら、「誰かを輝かせよう、役に立とう」とする仕事なのだということも言えるのかもしれません。

もちろん、個人差も企業や仕事内容によっての差もありますが、スタッフ職として活躍する人材としての「適性」は明確にあるのだと思うのです。「誰かのために」「全体のために」をつねに考えられるかどうか。あなたはどうでしょうか。

また、就業時間がきっちり決まっている、と見えるのは逆に、「フレキシブルに働きにくい」ともいえると思います。スタッフ職は会議や打ち合わせが多い仕事ですし、それこそ、誰かと一緒に仕事をするために時間を確保しなければならない業務で、「リスケさせてください」「有休を取りたいので欠席させてください」とは言いにくいものなのです。

個人的には、営業のほうが営業と顧客との間で調整できて、業績影響が少なければ、たとえば子どもが熱を出した日にも休みを取りやすかった実感があります。経験上は、スタッフ職だったときのほうが、「休むと迷惑をかける」「後の仕事に響く」と思ってしまったことが多かったですね。

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