残業上限と「女性活躍」を同次元で論じる愚

「生命」ではなく「生活」を守るルールが必要

残業上限100時間未満というのは、過労死しないための規制を設けただけ。ワーク・ライフ・バランスを整えることとは、また別次元の話です(写真:xiangtao / PIXTA)

女性の活躍を阻害している日本型雇用システムの特徴に、前回取り上げた転勤(「女性活躍阻む「日本型転勤」はなぜ生まれたか」)と並んで、恒常的な長時間労働があります。

「いつでもどこでも何でもやる」という日本型雇用の柔軟性が、時間という側面に投影されると、会社の必要に応じてどこまでも長時間労働をするという行動様式が規範化されるのです。こちらは、終戦直後に制定された労働基準法の本来の趣旨と、その後日本の労使がつくり上げてきた雇用慣行との落差が極めて鮮烈に現れている領域です。

週40時間以上働かせるのは「犯罪行為」のハズだが

圧倒的に多くの日本人にとって信じられないことかもしれませんが、日本国の法律によれば、週40時間、1日8時間を超えて働かせることは(つまり時間外・休日労働をさせることは)、それ自体が犯罪行為なのです(労基法32条、119条)。その罪を免れるためには過半数組合又は過半数代表者といわゆる36協定を結ばなければならない、と、労働法の教科書には書いてあります。しかしこれは現実の日本の労働者にはほとんど無縁な世界の言葉です。

ほとんどすべての会社の就業規則には「業務の都合により、所定労働時間を超え、又は所定休日に労働させることがある」といった規定が設けられ、こちらが雇用関係の根本規範として労働者を拘束しています。そしてそれを拒むことのほうが許されないこととみなされています。

前回、転勤を拒否した労働者の懲戒解雇を是認した最高裁判決を紹介しましたが、時間外労働についても同様に、1991年の「日立製作所武蔵工場事件」最高裁判決では、「残業命令に従わなかった上告人に対し被上告人のした懲戒解雇が権利の濫用に該当するということもできない」と述べています。日本の裁判所は、正社員の整理解雇にはかなり厳しい要件を求めるわりに、会社の命令を聞かない労働者に対する懲戒解雇には極めて同情的なのです。

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