「年を取っても働き続ける人」ほど健康なワケ 朝きちんと起きる理由があることは大事
年を取っても働き続けることに、健康効果はあるのだろうか。
科学的な研究を見ると答えはどちらかと言えば「イエス」だが、はっきりと結論が出たわけではない。やりがいのある職(主に単純労働よりは頭を使う仕事)を見つけた人の間では特にその傾向が顕著だ。
米国のベビーブーム世代は、これまでのほとんどの世代と比べて60歳代に入っても働き続けている人が多い。形態はさまざまで、定年を延長することもあれば、何らかのつなぎの仕事に就いた人もいるし、パートタイムで勤務する人も自営業を始める人もいる。その結果、近年では引退(つまり賃金労働を完全にやめること)するシニアはどんどん少数派になりつつある。
働くことの恩恵とは?
「働くことの恩恵とは何かと言えば、特に重要なのは脳の活性化や社会的ネットワークの活性化かも知れない」と、ハーバード大学医学大学院のニコール・マエスタス准教授(医療政策)はあるインタビューで答えている。
これまで専門家の間では、一定の年齢を超えて働くことで恩恵を得られるのは、教育水準が高く健康な人に限られるというのが通説だった。だが最近、研究者もシニア世代の当事者たちも、果たして労働は高齢者の精神的・肉体的な健康維持に効果があるのかという問いに向き合うようになってきた。これは興味深いばかりでなく、働く側にも政策担当者にも関係のあるテーマだ。
フロリダ州で長年、教育者として働いてきたマーク・トルイット(70)のこの問いへの答えは「イエス」だ。トルイットはこれまでに4回か5回、引退しようとしたが結局は仕事に舞い戻ってしまった。「引退して、自分で価値があると思えることを何もせず、あっという間に衰えてしまった元教師を何人も見てきた」と彼は言う。
トルイットは今、教育関係の非営利組織で週に10時間ほどコンサルタントとして働いている。「仕事はとても気に入っている」と彼は言う。