「年を取っても働き続ける人」ほど健康なワケ 朝きちんと起きる理由があることは大事
2011年にいったんは引退し、1年ほど休みを取ったが、新しい暮らしになじめなかった。そんな時、会社から全米各地の事業所で業務を支援する「ニンジャ」として職場復帰しないかと声を掛けられ、ウィルズはすぐに話に飛びついた。
「うちのビジネスでは、学ばなければならないことがたくさんある。採用のやり方は25年前とはまるで違っている」と語るウィルズは、今も新たなスキルを身につけるのに余念がない。
嫌いな上司のほうが社会孤立よりまし
働くことの「健康効果」は誰の目にも明らかに思えるかも知れないが、専門家にしてみると、なかなか断言することはできない。このテーマでの研究には、ほかとは違う難しさがある。引退が健康状態を左右しうる一方で、健康が引退時期を左右する場合もあるからだ。
「私の経験から言うならば、調査にはいろいろな要素が含まれている」とハーバード大学のマエスタスは言う。「私がこれまでに見た複数の研究は、長期間働くことの健康効果を示す傾向にある」
マックス・プランク社会法・社会政策研究所高齢化経済学ミュンヘンセンターの経済学者が全米経済研究所(NBER)に提出した論文にはこう書かれている。「嫌いな同僚や困った上司でさえ、社会的孤立よりはましと言っていい。なぜなら認知的課題を与えてくれ、活発で健全な精神の維持に役立つからだ」
他にも労働や雇用が社会とのつながりの充実度に与える影響を調べた研究は複数ある。