「年を取っても働き続ける人」ほど健康なワケ 朝きちんと起きる理由があることは大事

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シニア世代の健康と労働の関係について調べている研究者たちに言わせればこうだ。職に就いていれば毎日やるべき仕事や目的、つまり朝、きちんと起きる理由ができる。職場は社会的環境であり、人と人との集まりだ。職種にもよるが、勤務中は同僚や上司、部下、組合関係者、仕入れ業者に売り手に買い手といった人々とのやりとりがある。また働いている人は、健康維持のために投資しようという意欲も強い。

「引退してすぐは、まるで休日のような気分になるかも知れない」と語るのは、教育市場改革研究センターのガブリエル・ヘレルサフルグレン研究主任だ。「だがその後は『使わないものは衰える』状況になることが多い」

退職後2~3年後に影響が出る可能性も

仕事がもたらす「参加」と「人とのつながり」は、収入とともにシニア世代の健康維持に寄与しうる。つまり政府に求められるのは、高齢者が就職しやすい環境整備だ。「政治家は国民に死ぬまで働くことを強いるべきだという意味ではない」とヘレルサフルグレンは言う。「彼らがやるべきは、勤労意欲を阻害する要因を取り去ることだ」

ヘレルサフルグレンは、引退が精神的な健康に与える短期的・長期的影響について研究している。彼によれば短期的には何の問題もないものの、仕事を辞めてから2〜3年経つとマイナスの影響が出てくるとみられるという。この点については、性別や教育水準、職業的バックグラウンドによる違いはなかった。

「重要なのは人とのつながりだ」と語るのは、ミネソタ州でコンサルティング会社を営むウィリアム・ウェルズ(72)だ。孫娘が生まれた数年前からは勤務時間を短縮したものの、今も週に15〜20時間くらいは働いているし、それ以外に人脈づくりや顧客になるかも知れない相手との会食にも精を出している。「今でも(週に)10時間くらいは人脈づくりや関係構築に割いている」と彼は言う。

テキサス州に暮らすシャロン・ウィルズ(65)は、定年前まで勤めていた人材派遣会社で今も働いて。「家にいるのは苦手」だと語るウィルズは、新人採用の専門家だ。

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