トランプは国際金融を台無しにしかねない

FRB理事の辞任で高まる銀行監督の不確実性

注目されるのは後任である。2010年に成立した米金融規制改革法(ドッド・フランク法)では、FRBに金融監督担当の副議長職が新設された。まだ実際に就任した者はいないが、今後はどうなるかわからない。

トランプ大統領が選ぶべきタルーロ氏の後任の主要な任務は、国際協力を引き続き志向することか、あるいは米国の銀行をグローバルなルールから守る壁を作ることなのか。その点についても不透明感が漂っている。

一方、米下院金融委員会のマクヘンリー副委員長が1月31日付で、イエレンFRB議長に出した書簡の内容は、FRBウォッチャーを震撼させた。書簡は「国際交渉で米国の国益を最優先すべきだとのメッセージを、トランプ大統領が明確に発したにもかかわらず」「FRBは海外の官僚との間で、透明性や説明責任、そしてその権限もないのに金融機関監督の国際基準に関する交渉を続けている。これは受け入れがたい」と主張していたのだ。

イエレン議長は2月10日付の返信で、マクヘンリー氏の主張に真っ向から反論した。FRBは海外政府と協議する権限を長年にわたり有しているとして、「厳格な監督基準は米国の金融システム安定と金融各社の競争力強化に資する」と主張した。

これで一件落着とはいかない。マクヘンリー氏の書簡は、大統領に近い共和党議員がこうした議論を蒸し返す可能性を示している。ワシントンには分野を問わず、外国との絡み合いを嫌う思考がつねに存在するからだ。

またイエレン議長の主張がまっとうだとしても、FRBは国際的な交渉に参加する義務までは有していない。タルーロ氏の後任が、FRBの役割について見直すべきと主張するかもしれない。

資本市場自体に支障が生じる恐れ

そうした事態となれば、FRB内部には緊張が走り、いずれFSBやバーゼル委から離脱する事態を招くかもしれない。バーゼル委の事務局が置かれているBIS(国際決済銀行)には、1930年代、米国からFRBでなくJPモルガンが参加していた前例もある。

仮に似たようなことが現在起きれば、BISは機能しなくなってしまう。また、銀行の資本充実策などをめぐるバーゼルでのプロセスが立ち往生すると、西側の資本市場自体に支障が生じてしまう。

トランプ政権の誕生で金融規制の不確実性は高まり、「何でもあり」の状態になった。金融業界の関係者は皆、かたずをのんで先行きを見守っている。

週刊東洋経済3月18日号

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