ドナルド・トランプ米大統領が自身の同調者を政権に迎え入れた一方、オバマ前大統領に任命された人々が連邦政府や他の機関から去っている。それは金融業界でも同様だ。中でも重要だったのが、過去7年間にわたって金融業界への規制を主導したタルーロFRB(連邦準備制度理事会)理事の辞任である。
銀行業界におけるタルーロ氏の存在感は大きかった。同氏は米国やその他の地域における銀行の自己資本の充実化を主導した。交渉力は高く、金融機関の現場の意見にも耳を傾けた。
監督厳格化の回避として歓迎する向きも
ただし同氏の辞任について、欧州では表向きには嘆きつつ、内心では歓迎している向きも多い。
欧州では銀行各行だけでなく規制当局にも、タルーロ氏が「バーゼル3.5」または「バーゼル4」と呼ばれる厳格な自己資本比率基準の適用を提案したことを懸念する者がいた。仮にこの基準が適用されれば、欧州の銀行は大幅な資本充実を迫られる。だが、タルーロ氏が去れば、その実現が不確実になるのである。
タルーロ氏は世界中を飛び回り、規制当局者に協力を要請していた。彼はFSB(金融安定理事会)の中で、著名ではないものの重要な位置にあるSCSRC(監督および規制上の協調に関する常設委員会)委員長も務めた。
同氏がFSBやバーゼル銀行監督委員会などの国際金融機関と協力して、銀行の競争力を高めるための世界的な規制に向けて尽力していたのは間違いない。だからこそ、かつてタルーロ氏を強く批判した人々からは、彼の辞任について憂慮する声も出ている。
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