憲法を「正しく」変えるための世界史入門

もしくは、なぜ自民党の改憲草案は「十七条憲法」になるのか

参議院選挙を終え、「憲法改正」を改めて考える

著者:與那覇潤(歴史学者、愛知県立大学准教授) 撮影:今井康一

2013年7月21日、参議院選挙の投開票が行われた。通常であれば過半数をめぐる攻防が焦点だが、今回はもうひとつ、2/3ラインがどこに引かれるかが、大きな注目を集めた。むろん、憲法改正(の発議)が、戦後以来久々に、主要な争点となっているからである。

もっとも、与党である自民党・公明党と、昨年末の衆院選まで政権を担っていた民主党の議席数をあわせれば、以前からとうに3分の2を超えていたのだから、この三党が合意すれば、参院選を待たずしても改憲の発議には足りていたことになる。

その意味で今回の参院選は、単に日本が「憲法改正に向かうか否か」だけではなく、「どの党が」主導権を握る憲法改正の流れになるか、をも決定づけるものであったと言えよう。

高い内閣支持率の下で自民党は大勝したが、同党が昨年4月に発表した「日本国憲法改正草案」に関しては、さほど国民の支持が厚いわけではない。

特に、政府ではなく国民にも憲法尊重義務や、家族の相互扶助の義務を課し、「公益及び公の秩序」の名の下に人権が制約されるかのような規定を掲げた点には、改憲派からも多くの疑問が寄せられている。

国民の権利が侵害されないように、国家の権力に歯止めをかける、近代的な立憲主義の憲法ではなく、むしろ国家が国民に上から命令する「憲法」になってしまうのではないか、との懸念を抱かせるからだ。

それはあたかも、聖徳太子が臣下に統治の心構えを説いたとされる「十七条の憲法」への回帰のようにも見える。

次ページ改憲草案が「国民へのお説教」になる理由
関連記事
トピックボードAD
  • 「非会社員」の知られざる稼ぎ方
  • スナックが呼んでいる
  • ほしいのは「つかれない家族」
  • 若者のための経済学
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
携帯料金は4割下がる?<br>「高い」の根拠を徹底検証

菅官房長官の「4割下げられる」発言の数値的根拠は正当か? やり玉に挙がるキャリア3社の携帯通信料金の解明に担当記者が挑む。結論は「高いとはいえないが、キャリアは儲けすぎ」。取られすぎと感じる人必読の渾身リポート。