「サプライズ・ゼロ」の参院選だった。自民党大勝、民主党の壊滅的敗北、衆参ねじれ解消、それに低投票率も事前の予想どおりだ。
隠れた焦点の「自民単独過半数」は、必要な72議席獲得は成らず、実現しなかった。もう一つ、「憲法改正の発議に必要な3分の2 (162)」も自民、日本維新の会、みんなの党、新党改革の改憲勢力の合計は非改選議員と合わせて 143で、届かなかった。低投票率は、ねじれだと「決まらない政治」、ねじれ解消だと「衆議院のコピー」という現在の二院制に対する国民の不信感も原因の一つではないか。
現行制度下で自民党が参院選で最多だったのは小泉ブームの2001年の64で、それを1議席、上回った。だが、安倍ブームという空気は乏しかった。「自民党をぶっ壊す」「聖域なき構造改革」と絶叫した小泉氏と違って、八方美人型の曖昧路線だった。持論の憲法改正でも改憲構想の中身を示さず、アベノミクスも成長戦略に不可欠の規制改革への踏み込みは甘い。来年4月の消費税増税についても「与党の議論を踏まえて検討」と語るだけだ。
07年の参院選大敗の傷を背負う安倍首相は、参院選勝利最優先で走ってきたが、壁を乗り越えた先は、第一次内閣での予行演習も失敗の教訓も生かせない未踏の領域に足を踏み入れる。改憲も含め持論の安倍路線で本格勝負に出るのか、長期政権狙いで安全運転を続けるのか、裸の指導者として真価が問われる。
衆参の選挙で連勝し、政権基盤は画期的に強化された。だが、勝った瞬間が絶頂期で、そこから下り坂に転じる例は多い。野党との戦いは制したが、片方に与党内の非安倍勢力と霞が関の官僚機構と旧来型の自民党支持層、片方に世論と市場の動きという「新しい敵」が挟み撃ちにする図式となる。
未踏の場面で内外の困難、逆風、苦境に直面したとき、踏破する知力、胆力、気力、体力が備わっているかどうか。「復活の安倍首相」だけでなく、自民党長期一党支配のために時の首相を平気で使い捨てにする「したたかな自民党」が復活する可能性もある。
(撮影:尾形文繁)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら