参院選の隠れた大きな争点
参議院不要論も台頭か

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参院選の情勢調査は「圧倒的強さの自民党」で共通しているようだ。
今回の参院選は第一に政権復帰した自民党と再登場の安倍首相への評価を問う選挙である。3年前の2010年も、同様に政権交代実現の10ヵ月後の参院選で、政権を担った民主党と鳩山、菅の2首相の評価が焦点となったが、有権者は「政権担当能力の欠如」に厳しい判定を下した。

安倍首相は第1次内閣の07年と民主党政権の10年の2つの失敗例を教訓にして、就任後初の参院選を強く意識し、周到な準備と対策で臨んだ。持論封印、安全運転、経済最優先という路線を選択したが、「圧倒的強さの自民党」は作戦の成功が第一の理由だろう。

予想どおりの与党圧勝なら、当然、政権続投だから、選挙後の安倍首相の舵取りも参院選の論点であり、有権者の投票基準となる。アベノミクスの成否、とくに景気回復や所得アップが実現するかどうか、消費税増税にどう対応するのか、日中、日韓の関係など外交課題はどうなるか、持論の改憲実現に向けて動き出すのかどうか。重要な争点は多い。

実はもう一つ、隠れた大きな争点がある。07年以後、日本の政治は衆参ねじれの下での「決められない政治」と「強すぎる参議院」の弊害に苦しんできた。そこで明らかになったのは、現行の二院制が抱える問題点であった。
今回、「圧倒的強さの自民党」のパワーで、ねじれ解消となった場合、今度は逆に「衆議院のカーボンコピーの参議院」という従来の病弊が再浮上して「無駄な参議院」が焦点となり、参議院不要論が台頭しかねない。議員選出方法も、比例区と1人区中心の選挙区で、衆議院とほぼ同じ選挙制度だ。

多くの国民は、現行の二院制はもともと制度設計に不備と欠陥がある、とうすうす気づいている。であれば、今回、二院制と参議院のあり方こそ選挙の最大の論争点となっていいはずだが、選挙戦で各党とも関心を示さない。
統治機構の見直しとセットで憲法問題の一環として検討すればいいと思っているのかもしれない。それとも参院選を戦う各党や候補者は参議院のあり方を論じることが自己否定となると考えて回避しているのだろうか。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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