参院選後は安倍降ろし、政界再編もありうる 今後の政局のゆくえ

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安倍首相は7月3日、党首討論会で「ねじれ解消を」と述べ、参院選の目標は非改選と合わせて与党で過半数獲得という考えを示した。自信があるから、勝敗ラインを明言したのだろう。衆参で過半数を握れば、安倍首相は3年以上の長期政権が視野に入る。

だが、長期政権への野望の前に、安倍首相には参院選について別の思いと執念がある。3月、自民党の会合で「参院選は親の敵を討つようなもの。勝たなければ死んでも死に切れない」と語ったという。「親の敵」とは、幹事長時代の04年、1回目の首相の07年の連続敗北を指している。安倍首相には「参院選は鬼門」だ。「雪辱」の一文字が頭から離れない。就任以来、その一点に照準を合わせて準備してきたのだ。経済最優先路線を取ったのも、脱デフレ・経済再生だけでなく、参院選に有利という計算があったのは間違いない。

ここまでは作戦成功といっていいだろう。首相再登板から半年が過ぎても、内閣支持率は右肩上がりという異例の好調ぶりだ。狙いどおり、もし参院選でねじれ解消となれば、与野党の攻防の構図はどうなるか。独断と偏見を承知で、見立てを述べることにする。

参院選後も長期政権狙いで改憲路線封印、という見方もあるが、改憲が宿願の安倍首相は徐々に封印を解き、改憲に動き出すと見る。そうなると、改憲か護憲かではなく、憲法のあり方と中身をめぐる論点が新たな対立軸として浮上し、与野党の枠を超えて激動が始まるのではないか。野党では、日本維新の会は東西離縁に、それを機に大阪の維新とみんなの党は復縁に、と予想する。民主党もやがて分裂し、新党旗揚げとなる可能性がある。

自民党も無傷では済まない。安倍路線と穏健保守路線の対立が顕在化しかねない。そのときは政権保持と党分裂回避の方向にベクトルが働き、自民党内で安倍降ろしが始まるかもしれない。対する野党側で、民主新党、維新、みんなの党などが大連合を組むという展開となれば、政党政治が生き返る可能性があるが、そんな潮流が生まれるかどうか。

(撮影:梅谷秀司)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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