ダメな上司は部下の目標設定がわかってない 防衛大で学んだ不可能を可能にさせる方法

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しかし、答えは「NO」です。場当たり的な「気合」や「根性」といった精神論ではありません。「リーダー」から「部下」に対する一方的な押し付けでもありません。それでは人は動いてくれません。

誰一人落ちこぼれを出さずに

拙著『防衛大で学んだ 無敵のチームマネジメント』にも詳しく解説していますが、防衛大式マネジメントとは、「今いる社員を一流に」をモットーに、誰一人落ちこぼれを出さずにチームの「成果」を最大化する手法です。私自身の実績では部下たちは自立型人材に変わり、目標予算を達成。離職率は6%まで下がりました。

そのポイントの1つは、部下一人ひとりにまず小さな目標から達成させることです。

防大1学年時に経験した訓練の1つが「遠泳訓練」です。500人超の学生で列を組み、東京湾を8キロメートル泳ぎます。「泳げる人、泳げない人」は関係なく、全員が泳ぎきらなければなりません。

訓練時、上級者は白色、普通に泳げる人は黄色、泳げない人は赤色の帽子をそれぞれかぶります。私は赤色でした。そんな「泳げない人」には補習があります。水に慣れるところから始まり、25メートルを泳げるレベルまで訓練をします。そして25メートル泳ぎきった私を含む「赤帽」たちはプールサイドに集められ、教官にこう言われました。

「25メートル泳げれば、8キロもすぐに泳げるよ」

これにはたまげました。たった25メートルしか泳いだ経験がないのに、その320倍もの距離を泳げるようになるというのです。

その日からまた過酷な訓練が続きました。毎日、教官たちが用意している8キロメートルから逆算した練習メニューをひたすらこなします。そもそも海で8キロメートルも泳いだことがある同期なんて、上級者にも1人もいませんでした。

次に練習舞台は「プール」から「海」に移りましたが、想像を絶していました。まず、汚い。どこを泳いでいるのかわからなくなるくらい前が見えない。そして、高波のせいで波酔いしました。

列を組んで泳ぐのですが、列が乱れると船の上の教官から拡声器で注意されます。本番は8時から15時くらいまで泳ぎます。本番を想定して、食事の支給もあります。生まれて初めての海を泳ぎながらの食事でした。教官が乗っている船の上から、「乾パン」を投げます。その投げられた「乾パン」を500人超にも及ぶ青年男女が波にもまれながらパクパク食べます。まるで池の中でエサを食べる「コイ」です。

そんな状況でしたが、われわれは誰一人欠けることなく、完泳しました。教官の言葉どおり、私を含むほとんど泳げなかった赤帽たちが25メートルを泳げるようになってから、それほど時間が経っていないにもかかわらず、8キロメートルを泳ぎきったのです。

この経験は「部下育成」においても大いに役立ちました。管理職になって半年ほど経ったころに、継続しては無理だけど、単月の目標予算は達成できる部下が増えてきました。

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