東洋経済『CSR企業総覧』2017年版データを用いたランキングシリーズの女性活躍編の最後は、「役員」を取り上げる。
企業において「役員」の地位は、一般の従業員とはまったく異なる。与えられた権限は絶大で、多くの場合、それぞれの管掌部門の舵取りを任されており、その全責任を負っている。したがって、役員の考え方や方針次第で、当該部門の、ひいては会社全体の方向性にも大きな影響を与えうる。
こうした重要な役割を担う役職への女性の登用について、まず日本の現状をみてみよう。弊社刊『役員四季報』(2017年版)によると、日本の上場企業(ジャスダック含む)の女性役員数は、2010年には554人(女性役員比率1.3%)だったが、2014年には816人(同2.1%)へと増加し比率も2%を超えた。その後は増勢を強め2015年は1142人(同2.8%)、2016年は1388人(同3.4%)まで増加した。
それでも諸外国にはまだまだ遠く及ばない。OECDの調査によると(2015年データ)、企業の取締役会メンバーに占める女性の比率は、アイスランドの44%を筆頭に、フランス33%、英国26%、ドイツ25%、米国19%などと続くが、日本は3%で調査31カ国中、断トツで低い。
それでは、ランキングをみていこう。なお、『CSR企業総覧』2017年版(雇用・人材活用編)では、「役員」の範囲について取締役、監査役、執行役に加え、商法上の規定のない「執行役員」を含めている。
女性役員比率のトップはシーボン
女性役員比率でトップとなったのは、女性向けの化粧品の製造・販売、およびビューティサロンを全国展開するシーボンで、比率60%は断トツの高水準。1966年に女性の“美を創造し、演出する会社”として誕生した(同社HP)だけに、納得できる水準だ。2013年版(2012年度データ)で比率が57.1%とすでに役員の過半数が女性で、以降6割前後で推移している。
全従業員数1159人のうち女性が1081人と圧倒的に女性が多いこともあり、本稿第1弾でご紹介した「女性管理職比率」でも88.2%とトップの座にある。同社では「ウェルカムバック制度(再入社制度)」や「ショートタイム正社員」などの支援制度を設け、働きやすい職場環境づくりに努めているほか、新入社員から管理職までステージに応じた研修制度が準備され、人材育成にも注力している。
2位はニチイ学館で女性役員比率は40.5%。2013年版(2012年度データ)では比率27.3%だったが、2014年(2013年度データ)は30.0%、2015年(2014年度データ)では35.0%と着実に比率を高めてきた。同社も「女性管理職比率」が77.0%で2位となっており、この比率は直近5年間ほぼ同水準を維持している。
つまり、同社では管理職への女性登用は当たり前となり、さらに役員クラスへの登用が進んでいる段階にあることが見て取れる。同社の事業領域は、医療、介護、教育を3本柱に、さらにヘルスケアや保育へと拡大している。いずれも女性(母親)目線が不可欠な分野だけに、女性の活用が事業展開に大きく貢献しているといえよう。
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