週7日飲酒?赤提灯に集う「暗黒女子」の正体 仕事に疲れた彼女達は横丁に「家族」を求める

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Tさんも「私はお酒とおじさんが好きなので、野毛は性に合っています。会社以外の人と一緒にいるのが、なんだか心地よいし、知らない人の話を聴くのが楽しい。常連さんの顔が見えないと、どうしたのかなと思います」と言う。

「昔、自分がもし結婚しないとしたら、自分が死ぬときに看取ってくれる人は欲しいなと思いました。だとしたら、小料理屋を開いて、お客さんに看取られるのがいいなと思ったりしました」(Tさん)。どうやら、横丁に信頼できる仲間を求めているらしい。

男並みに働けば、横丁にも行きたくなります

今回取材した4人に共通するのは、総合職で、男性と同様に遅くまで働いていることだ。そうなれば、ライフスタイルは男女同じ。仕事で疲れれば、酒を飲みたくなり、しゃれた店より古い横丁のなじみの店に足が向かう。酒のアテも塩辛だのからすみだの。そしてエネルギーを補給するために肉を食べる。胃がもたれている私は、セロリのピクルスを食べながら話を聴いた。

金曜日の深夜、野毛ではほろ酔いの女性たちが次の店へと向かう(撮影:今祥雄)

Tさんを紹介してくれたSさん(27歳)は、暗黒女子というほどではないが、彼女たちに共感する部分もある。「残業は多いですよ。仕事に疲れたときはレバーがたくさん食べたくなります。鶏レバーも牛レバーも豚レバーも好き。会社の男性ともホルモン店や焼き肉店に行きますが、男性はレバーをあまり食べません。女性のほうが食べる」。

さらにマニアックなものにも手を伸ばす。Tさんは言う。「普通は食べないげてものの店にも行きます。カンガルーとか、ワニとか。恐い物見たさというか、刺激が欲しいんですね。そういうことができる自分に優越感を感じます」。

このように、毎日のように仕事の疲れを癒すためにお酒を飲む女性が増えている。しかも盛り場で。もはやアフターファイブにスイーツを食べるOLのイメージはない。男性と同じ、いや、男性以上に男性的。見知らぬ客と隣り合い、なじみの常連と話し、今日も彼女たちの夜は盛り上がる。

三浦 展 社会デザイン研究者

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みうら あつし / Atsushi Miura

カルチャースタディーズ研究所主宰。1958年生まれ。1982年に一橋大学社会学部卒。パルコに入社し、マーケティング誌『アクロス』編集室。1990年に三菱総合研究所入社。1999年に「カルチャースタディーズ研究所」を設立。消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。 著書は、80万部のベストセラー『下流社会』のほか、『第四の消費』『日本人はこれから何を買うのか?』『東京は郊外から消えていく!』『毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代』『あなたにいちばん似合う街』など多数。

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