福原愛の夫選びから見る「21世紀の美男論」 男は「渋さ」より「美しさ」で選ばれる時代だ

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以前取り上げた、フランス大統領選で急浮上しているエマニュエル・マクロンの妻で、元教師のブリジッドだって、妖精と見紛うばかりに美しい教え子に悩殺されたに違いないのです(「仏大統領戦「24歳差婚」男にパリ中熱狂の裏側」)。もっとも、彼女の口からは「彼が利発だったから」とか「性格がとてもよくて」といった美辞麗句が出てきますが、30過ぎの子持ち人妻教師がそんなことで動じるものでしょうか? 私はそうは思いません。

女だって、いいえ美の感受性に富む女性だからこそ、“彼の美しさに惚れて落ちる”必然性があるのです。「彼に決めた1番の理由は、その美しさです」と言えるようになりたいものですし、なんといっても“そんな彼に出逢いたい”と切実に思うのです。

考えてみれば、かつて話題を呼んだ井上章一の『美人論』だって、美人と言いつつも美女ばかりしか論じていません。天の半分を支える“男”は人ではないのでしょうか。美男を論じないのは男性差別ですよ。美しい男性を救ってあげなくてはいけません! 私は身を挺してその任に当たりたいと思います。

もはや時代は変わったのです。といっても、よしながふみ『大奥』の世界ほどの男女逆転ではありません。現在地点は、男が美しくあることもオフィシャルなスペックになったといったところ。

かつて、40を過ぎた男の魅力を語る言葉といえば、「渋さ」や「成熟」でした。では、今人気のある40代はどうでしょう? 福山雅治、堺雅人、元SMAPの5人。セクシーと言えなくはないけれど、渋くはない。甘い・あまい・スィート・フェイスです。過去の基準で評せば、女性的ではなくとも男性的ではない、中性的なゾーンの美しさになりますね。

いつごろから、こんなことになってきたのでしょうか?私見では、タバコが世間の「目の仇」にされてきたあたりが時代の境目のように思います。

私がまだ乙女だった時分、彼のワイシャツに顔を埋めたときに鼻をつくタバコの香りに男の色気を感じ、胸キュンとしたものです。今やタバコの香りはヤニ臭いだけ、不健康男のレッテルが貼られます。そして、中性的な顔が魅力的だとされるようになったのです。時代が変われば、美しさの基準だって変わってしまうということですね。

女性のようにお化粧するわけにはいかないが……

ともあれ、男も美しさで選ばれる時代が到来しました。女ばかりが観賞される時代は終わったのです。ただ、男性がお化粧に狂奔する時代がすぐ来るとは思われません。女性のように「デカ目メイク」や「整形メイク」「詐欺メイク」などの手練手管はなく、老化したってスッピンで勝負するしかないので大変です。

その分、美容整形の技術は精巧になってきて、男性芸能人たちの化け方ときたらすごいものです。これが一般男性まで広まってきたら、まさに狐と狸の化かし合いに突入してしまいますが、今ならまだ大丈夫です。

『生涯恋愛現役』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。

そんなのは「子ども文化」じゃないか。日本的、あるいはアジアンの偏向にすぎないのではないかですって?とんでもございません。フランスでも、外見も内面もまるで若者のように振る舞う、「50代思春期(=カンカド)」の新人種についてはご紹介しました(「パリの男女がハマる「50代思春期」の衝撃実態」)。ベビーフェイス、ネオトニー(幼児成熟)的な魅力であれば、アドバンテージは日本人にあります。

今や、美の階層秩序が崩れて混乱しているアノミー(anomie)時代が到来しているのです。センシュアルという尺度も1点に収束するのではなく、個人の生活感覚や美意識で多様化し分散しているように思います。だからこそ、自分という個性が大切なのです。

中高年男性のみなさんに一言呈します。「独りよがりの渋さで自己満足したって、若い女性は振り向いてくれないよ。同世代のおばさんならまだ相手してくれるかも。たまには遊びにおいで!」と。

岩本 麻奈 皮膚科専門医

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いわもと まな / Mana Iwamoto

一般社団法人・日本コスメティック協会代表理事。ナチュラルハーモニークリニック顧問医師など。東京女子医科大学卒業。慶應病院や済生会中央病院などで臨床経験を積んだ後、1997年に渡仏。美容皮膚科学、自然医学、抗老化医学などを学ぶ。現在は、パリの中心に居を構え、欧州大手製薬会社やコスメメーカーなどのコンサルタントを務める傍ら、さまざまなメディアを通して美容情報を発信中。3人の成人した息子がいる。著書は『女性誌にはゼッタイ書けないコスメの常識』『パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ』ならびにその携書版である『生涯恋愛現役』(以上ディスカヴァー・トゥエンティワン)など多数。オフィシャルブログはこちら

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