三つ目の国是ということやけどな、国の方針というようなものが、日本には、なんもないな。国を永遠に発展させようと願うなら、国としての方針が大事や。そやろ。
百メートルの短距離を走るのなら、ゴールも見えるし、だから、スタートのときに、よし、がむしゃらに走ったろうということだけでええけどな、マラソンとなったらそうはいかんやろ。いろいろ方針を立て、対策を考えんといかん。
なぜ国の方針が必要なのか
国としての方針が、いらんという人は、まあ、短期決戦で国を考えてるようなもんやな。また、そうした方針がないと、社会はスムーズに進んでいくということは、難しいわね。だから、社会全体に無駄な動きが多くなる。いま税金の話をしたけど、そうなれば当然、税金がよけいに要ることになるんや。税金を少なくするためにも、国の方針というものは、必要やな。
しかし、それはともかく、これからの日本を考えると、なんとしても方針を立てんといかんね。今まではまだ、うん、それはあったほうがよかったけど、無くてもよかったかもしれんな。
それはな、大東亜戦争で日本は負けたやろ。で、国民は、食べるものも着るものも住む家もなくなった。そこで、とにかく食べられるようにせんといかん、寒さをしのげるようにせんといかん。まあ、そう考えて、国民みんな、死にもの狂いで一生懸命働いたんや。誰言うとなく、国も国民も「経済復興」が暗黙の国民的合意になった。別にこれが国是だとか、国の方針だとか鮮明にしたわけやないけど、そうなったと。それは、そういうように、そうなるような条件があったわけやな。
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