幸之助は「政治家の条件」をどう考えていたか

経営の神様が語ったこれからの政治家像

松下幸之助は85歳のときに「松下政経塾」を創設。政治家の育成に乗り出した(撮影:高橋孫一郎)
江口克彦氏の『経営秘伝――ある経営者から聞いた言葉』。松下電器産業(現パナソニック)の創業者である松下幸之助の語り口そのままに軽妙な大阪弁で経営の奥義について語った著書で、1992年の刊行後、20万部を売り上げるヒットになった。本連載は、この『経営秘伝』に加筆をしたもの。「経営の神様」が問わず語りに語るキーワードは、多くのビジネスパーソンにとって参考になるに違いない。

 

わしはな、昔は、政治というものはお上(かみ)というか、政治家やお役人に任せておけばいい、商売人は商売に一生懸命取り組んでおればいいと思っておったんや。戦争前は一般的にもそういう考え方であったな。だから、わしは仕事だけにひたすら打ち込んでおった。

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ところが戦争になって、それで軍部に協力せよということで、結果的にはあまり貢献できんかったけど、飛行機とか船とかも造らされた。わしなりにお国の為やから、懸命に努力した。けど、戦争に負けたらな、それまでやってきたことがすべて、と言っていいほど、なんもなくなってしまった。

政治への期待は裏切られた

営々と築き上げてきた会社はガタガタになってしまった。会社を頼りにして働き生活していた人たちも苦しい毎日を送らんといかんようになった。商売人だけではない。すべての国民が政治はお上に任せておけばという、そういう期待が裏切られてしまった。

うん、別にお上だけが悪いと言っておるんやないで。それはまた、国民にも責任がある。「政治はお上に任せればいい。自分たちは自分たちの生業をやっておればいい」というように考えたわしのような国民にも責任があるわね。

考えてみれば、家を建てるときに、家はしっかりしたものを建てるべく懸命の工夫努力をするけれど、その家が建つ土台とか土地のこと、場所のことは考えないと。そういうことでは、あかんわね。やはり考える。考えんといかんわけや。

家は頑丈に、少々のことがあっても崩れません、倒れませんというても、土台が崩れたり、土地が沈んだりしたら、これはどうにもならんやろ。それと同じやな。国民一人ひとりがそれぞれの仕事を懸命にやり、努力しても、そのよってたっておる国や政治が混迷し混乱したら、もう、それで個人の生活はおしまいやと。国民の生活も、会社も成り立っていかんわけや。

次ページこれからは「右手にそろばん、左手に政治」
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