50歳程度で「引き算」の人生をしてはならない 松下幸之助は「160歳まで生きる」と考えた

✎ 1〜 ✎ 50 ✎ 51 ✎ 52 ✎ 53
拡大
縮小
松下幸之助は85歳のときに「松下政経塾」を創設した(撮影:高橋孫一郎)

松下が「160歳まで生きる」と言いだしたのは80歳のときであった。誕生日にある人からお祝いをもらったところ、その熨斗(のし)に「半寿」と書いてあった。「半」という字を分解すると「81」になる。満80歳は数えで81歳だから、それで半寿という。言葉の遊びにすぎないが、80歳が半分ならば「全寿」は160歳。それでは自分は全寿をまっとうしよう、と言いだしたのである。

松下がこのようなことを言いだしたのは、これが初めてではなかった

130歳まで生きると言い出したことも

その前には106歳まで生きるのだ、と言ったこともある。106歳まで生きると、19世紀から21世紀までの足かけ3世紀にわたって生きることになるからであった。あるいはそののち、130歳まで生きると言ったこともある。日本の長寿記録が124歳だから、その記録を破りたい。125歳まででもいいけれど、まあ、切りのいいところで130歳までにしようということであった。

130歳まで、と松下が言いだしたころ、私は京都・大徳寺の立花大亀老師に呼びだされたことがあった。「松下さんが130歳まで生きるとか言っておるようだが、もし生きれんかったらみっともない。ああいうことを言わないように伝えてくれ」ということであった。

しかし私はそれを松下に伝えることはしなかった。なぜなら、松下はたとえそれより早く死ぬことになったとしても、そのぎりぎりまで全力を尽くして生きぬくだろう。しかしもし、死ぬのが明日かもしれない、1年先かもしれないなどと考えていれば、その生き方も必然、力弱いものになってしまう、と思ったからだ。

次ページぎりぎりまで全力を尽くして生きぬいた
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT