人は誰でも50歳を過ぎると、引き算の人生になりがちである。保身に走りやすくなる。70歳を越えると、桜の花をあと何回見ることができるだろう、もう最後も近い、と思う人が多いらしい。そう考えれば、生き方も消極的にならざるをえない。元気もなくなるし、弱気になる。
しかし、160歳まで生きるのだと思えば、引き算の人生どころではない。まだ80年も生きるのだと思えば、やりたいこと、やらなければならないことが、つぎつぎと湧き起こってくる。気力も出てくるし、ぼけている暇もない。実際、松下は晩年までたくさんの夢を抱き、その実現のために行動を起こし続けた。
「松下政経塾」を創ったのは、85歳のとき
松下が政治家を養成する「松下政経塾」を創ったのは、85歳のときであった。いままでにその政経塾から十数名の衆議院議員が誕生し、活躍している。また、結局は実現しなかったとはいえ、新政党の結成を最終的に意図したのはなんと90歳のときであった。多くの人びとが、そのように精力的かつ積極的な松下の提案と実行に驚嘆した。
松下が最後までいろいろな発想と実行ができたのは、ひとつには160歳まで生きるのだという強い意志があったからだということを、私は間近に見てきた。そして、目標を大きく設定することによって、松下は最後まで死にとらわれることがなかった。
だから、満80歳のときに160歳まで生きようと思った松下の決意は、さまざまな形で実を結んだと言っていいと思う。そして、人間としての成功も見事に果たした、と言っても、おそらく誰からも許していただけると思う。私もまた、同じようにありたいと思っている。
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