「バーゼル3」の完全導入が難航しているワケ トランプ次期大統領の就任にリスク

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銀行監督ルールをめぐって欧米の監督当局の意見が割れている。写真はフランクフルトの欧州中央銀行(ECB)本部。2016年3月撮影(ロイター/Kai Pfaffenbach/File Photo)

2008年の世界金融危機によって、国際的な銀行監督基準を定めるバーゼル銀行監督委員会が世界中の金融界の注目の的となった。各国政府は銀行の危機が国境を越えて広がるのを防ぐため、従来の基準だったバーゼル2に代わる、より厳格なグローバルルール(バーゼル3)の策定に躍起になった。

その結果として2009年4月、従来の金融安定化フォーラムを拡大・強化する形でFSB(金融安定理事会)が創設された。そのポイントは主要ルール策定にG20(先進20カ国・地域)の全代表を含める点にあった。メンバーシップ拡大により、銀行システムの資本増強に対する政治的な支援拡充を期待したのだ。この変革は有効だったといえる。

そして2013年から新銀行規制のバーゼル3が段階的に導入された。バーゼル3では、個別の銀行に義務づける資本の規模を2倍以上に増やし、資本の質を向上させた。その結果、銀行システムの安全性がやや高まったように見える。

ゴール寸前でつまずき

だが2019年のバーゼル3完全導入を前に、最終的な取りまとめが難航している。これは危険な兆候だ。

FSB発足の前、関係者の多くは組織の拡大が障害になるとの見方を示していた。金融危機まで日米欧にカナダの代表者を加えた十数人だったルール決定メンバーが20人以上へと増え、合意形成が困難になると見ていたのだ。しかし、この点は大きな問題ではなかった。

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