米国の貿易交渉を担う米通商代表(USTR)にロバート・ライトハイザーを指名したドナルド・トランプ次期大統領は、大統領経済諮問委員会の委員長と農務長官を除く経済政策チームの人選を完了させた。残りの人事も近いうちに発表されるだろう。
トランプ政権の経済政策チームは、財務長官にゴールドマン・サックス元パートナーであるスティーブン・ムニューチン、商務長官に投資家で元銀行家のウィルバー・ロス、国家経済会議(NEC)委員長にゴールドマン・サックス社長兼最高執行責任者(COO)のゲイリー・コーン、新設される国家通商会議(NTC)の代表者にエコノミストのピーター・ナヴァロ、そして前述のライトハイザーで構成されることになる。
実は万人受けする経済政策
大統領選中に、トランプが掲げた公約「Make America Great Again(米国を再び偉大にする)」が有権者にウケた理由のひとつは、共和党員と民主党員、そして富裕層と貧困層へと、それぞれに魅力的な政策を示したことだ。
たとえば、富裕層や実業家に対しては、個人と企業の両方に対する大幅な減税を提示した。複雑な米国の税法を単純化することによって、個人に対してはそれぞれの収入に応じて12%、25%、33%を課税することを提案している。この施策の恩恵を最も受けるのは、所得上位1%に属するような富裕層である。トランプはまた、法人税についても、35%を15%に引き下げることを提唱している。ただし実現すれば、国家の歳入は今後5年間で9.5兆ドル減り、その後10年間でさらに15兆ドル減る可能性があると、税金の専門家たちは懸念を強めている。
実業家に対しても思い切った規制撤廃を提示している。財務長官に指名されたムニューチンは、2008年の経済危機の際に起きたような経済破綻を防ぐことを目的として2010年に法制化された米金融規制改革法(ドット・フランク法)を大幅に緩和することを約束している。
また、環境保護局(EPA)長官に指名されているオクラホマ州のスコット・プルイット司法長官は、気候変動に懐疑的で、現在の環境規制を大幅に緩和するとしている。エネルギー庁長官に指名されているリック・ペリー前テキサス州知事は、2011年に自身が廃止することを提案したポストに就くことになる。極めつけは、「乗っ取り屋」として名を馳せた投資家のカール・アイカーンが規制緩和特別顧問に就任することだ。
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