1997年以来の日本での投資経験がある彼の最も注目すべき成果は、破綻した大阪の幸福銀行を買収し、関西さわやか銀行に再編した後、最終的に三井住友銀行の子会社、関西銀行に吸収合併させたことだ。2010年からニューヨークにあるジャパン・ソサエティ(日米協会)の会長を務めているほか、2014年には日米の経済関係に貢献したとして日本政府から表彰されている。
「トランポノミクス」がはらむ危険性
個人と企業への大幅な減税、思い切った規制撤廃、多額のインフラ投資、保護主義の貿易・投資政策という珍しい組み合わせは、すべての米国人に何かしらを与えようとしている。この公約の組み合わせがうまくいけば、トランプは実際に「米国を再び偉大にした」という功績を残すことができるだろう。政権を引き継ぐうえで、現在の経済状況が好調なのは、実に彼にとって幸運なことだ。これは、バラク・オバマ大統領がその前任者であるジョージ・W・ブッシュ前大統領から引き継いだときの、恐慌寸前にあった経済状況とは対照的だ。
しかし、トランプが自らの公約に基づいて行動するならば、そこには大きな危険性がある。彼が提案する減税案は財政赤字を拡大し、所得と富の格差をさらに拡大させることになるだろう。行き過ぎた規制撤廃は、結果的に反競争的企業行動と企業破綻とそのための救済措置、消費者への損害、環境悪化、地球温暖化をもたらす可能性が高い。
貿易や投資政策についても、米国の製造業者と消費者に損害をもたらす貿易戦争を引き起こしかねない。米企業による雇用流出を防ぐ施策が、必ずしも雇用維持につながるともかぎらない。さらに、製品やサービスの自由貿易を制限する試みによって、米国は「鎖国」状態となり、米企業の競争力が一段と低下するかもしれない。
トランプに票を投じた人々は、「劇的な変革」を望んでいた。彼らは、トランプが危険要因になることはわかっていながら彼に投票した。なぜなら、ヒラリー・クリントンがより経験豊富かつ実績があり、予測可能であるものの、彼女はエスタブリッシュメントと現体制の象徴であり、変革をもたらす候補者ではないと考えたからだ。はたしてトランプの変革は、米国民が期待するような結果をもたらすことができるのか。非常に興味深い政権が始まろうとしている。
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