トランプは、伝統的に共和党の最優先事項となっている減税と規制緩和を推し進める一方、米国の幹線道路、トンネル、橋、空港を整備するために、今後10年間で1兆ドルの投資を行うことも約束している。これは民主党が何年にもわたって提唱してきたことだが、この8年間、こうしたインフラ投資を「妨害」してきたのは何を隠そう共和党である。
ただ、ここで気をつけなければいけないのは、このインフラ投資がどの程度、民主党が提案していたとおり公共財を提供するために政府によって行われ、共和党が提案するように企業に利益を与えるためにどの程度、民間部門によって行われるかである。
トランプ流の雇用流出対策
一方、貿易・投資政策は、概して自由貿易を好む従来の共和党と、トランプが最も異にしているところだ。トランプは北米自由貿易協定(NAFTA)や環太平洋経済連携協定(TPP)に反対しており、こうした協定は米国人労働者から仕事を奪い、産業空洞化を加速させる「悲惨な合意」であると主張。多国間の貿易協定ではなく、2国間であれば米国に有利に交渉ができるとしている。
大統領選中、トランプは不公正な取引慣行や通貨操作を行う国からの輸入品に20%の関税を課すと脅かしていた。中国に関しては、45%という関税額を示したこともある。さらに、日本が米国からの輸入牛肉に38.5%の関税をかけているので、米国が輸入する日本製の自動車にも同じ割合の関税をかけるべきだとも述べていた。
トランプはまた、株主の利益を最大化するために企業が自由に活動することを優先する大抵の共和党議員と異なり、米国外に仕事が「流出」するのをやめるよう、米企業に圧力をかけている。実際、米国から生産拠点を移し、海外で生産を行う米企業が販売する製品に35%の関税をかけると脅したこともある。
米空調大手キヤリアは先月、インディアナ州にある工場をメキシコに移す計画をトランプの”説得”によって撤回し、同州内で800人の雇用を維持することを約束したが、トランプはこれを自らの成果だと豪語している。もっとも、この背景には、同州に雇用をとどめる見返りとしてインディアナ州が行うキヤリアに対しての今後10年にわたる700万ドル以上の税制上の優遇措置があるのだ。
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