年も改まり、1月20日にトランプ政権がいよいよ誕生する。
「アメリカファースト(米国第一主義)」を掲げて、反グローバリズム的な経済政策を前面に押し出し、これまで米国が維持してきた政策を根底からひっくり返す言動を繰り返す……。いわゆるポピュリズム(大衆迎合主義)の波に乗って誕生した政権だ。
トランプ氏が選挙で勝利するまでは、「彼が大統領になると米ドルは売られ、株価は大暴落する」と予想されていたが、実際にはドル高となり、ニューヨークダウが史上最高値を更新する「トランプラリー」のおかげで、金融業界でもすっかり「トランプ歓迎」のムードが漂い始めている。
しかし、トランプ政権は為替市場や株式市場の動向などでは計り知れないリスクと危険性をはらんだ政権になることは、その閣僚人事からも明らかだ。拙著『トランプ政権でこうなる! 日本経済』でも触れたが、しょせん大衆に明るい未来を提示し、苦しい現状から抜け出せるかのような幻想を抱かせるポピュリズムがうまく行ったためしは、これまでの歴史には存在しない。
米国国民も1年もしないうちにトランプ政権の本質を見抜いてくるだろう。ただ、トランプ氏は「Twitter(ツイッター)」を使うことで既存のメディアからの批判をかわすなど、大衆を煽るストラテジー(戦略)を効果的に使うノウハウを持っている。場合によっては、いつまでも大衆を幻想から覚めさせない催眠術師のような存在になる可能性も残されている。そんなトランプ政権の危険性について少し考えてみよう。
トランプ政権は政治経験のない素人集団
トランプ政権の経済政策をどう判断するか? 現在、閣僚人事などから様々な推測が出ているが、経済に関わる閣僚の大半は大富豪か、会社経営に成功したCEOが候補に上っている。大富豪で会社経営に成功したからと言って、政治ができるかどうかは全く未知数。そもそもトランプ氏自身がそうなのだから、トランプ政権は政治経験のない素人集団と言っていいだろう。
そんなトランプ政権が掲げる経済政策は、いまのところ財政政策は10年で1兆ドルと言われるインフラ整備や軍事費増強などの「財政拡大」と大規模減税による「小さな政府」の実現、加えて通貨政策はアメリカファーストの観点から「ドル高政策」と見られている。
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