保護貿易主義をとることで、海外に出て行った工場が再び米国内に戻ってくる。移民や不法滞在者に奪われていた雇用も、移民排斥政策で戻ってくる……。そう信じて、米国の中流労働者階級は揃ってトランプに投票したわけだ。
従って、これまで米国がリーダーとなって推進してきた自由貿易主義やグローバリズムといった考え方は大きく後退することになる。こうした保護貿易主義や孤立主義的な考え方というのは、世界経済を大きく混乱させる。
現時点でドル高や株価上昇にかけている投資家の多くは、レーガノミクスに近い、ルービノミクスに近い、といった具合に、自分に都合のいい部分だけをピックアップしてバラ色の未来を思い描いているが、それは大きな間違いだ。
リーマンショックという大恐慌に匹敵する経済危機を、米国は歴史から学んだ英知によって何とか回避したが、すべてをぶち壊してしまう可能性が出てきている。米国が、保護貿易に踏み切れば、当然ながら相手国は報復関税をかけてくる。米国の言いなりになるのは日本くらいなものだろう。
日本政府はトランプ政権に押しまくられる
実際、日本は今後米国に対して、極めて弱い立場に立たされることになる。TPP交渉開始時に、米国を交渉の席に座らせる目的で、米国と交わした「日米並行協議」は、トランプ政権がTPPから離脱した後も有効で、トランプ氏が言うように今後は、TPPではなく個々の国ごとに「2国間自由貿易協定(FTA)」を結ばされることになる可能性がある。
しかも、これまではのらりくらりとかわしてきた様々な市場の開放も、日米安保条約の見直しといった防衛問題と絡ませて交渉の場に引っ張り出されることだろう。そうなった時、米国べったりだった政府や自民党が、トランプ政権のCEO軍団を相手にまともな交渉ができるのか、はなはだ心もとない。
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