このように減税しながら財政出動する、といった異なる考え方を組み合わせた経済政策をポリシーミックスというが、これはたびたび失敗している政策でもある。
トランプ氏の政策が似ているとよく言われるレーガノミクスも、最終的には財政赤字と貿易赤字という「双子の赤字」を作ってしまった。
ちなみに、同じドル高政策でポリシーミックスによる経済政策をとった政権としては、クリントン政権がある。当時の財務長官であるロバート・ルービンはクリントン政権の第一期に緊縮財政、金融緩和、ドル安政策を指示し景気を回復させることに成功。インフラ整備に民間資金を活用して拡大させ、さらに軍の持つ技術なども積極的に民間に開放させることで、レーガノミクスが作った双子の赤字を解消した。
「レーガノミクス」か、それとも「ルービノミクス」か
続くクリントン政権の第二期では一転して金融引き締め、ドル高政策で景気回復を継続させようと試みた。「ドル高は国益」という彼の言葉は有名になり、「ルービノミクス」という言葉も生まれた。
ルービノミクスは、米国を製造業や軍備増強による景気回復ではなく、金融王国として景気回復を狙ったのだが、結果的にはITバブルを生み、2008年のリーマンショックにつながる不動産バブル、クレジットバブルを生成してしまった。
米国はリーマンショック以降、大胆な金融緩和政策が取られてすでに7年間も経済成長を続けている。そういう意味では、景気後退期に導入されたレーガノミクスよりも、景気回復期に導入されるドル高政策のルービノミクスのほうが、比較しやすいのかもしれない。
トランプ政権の経済政策がレーガノミクスに近いのか、それともルービノミクスに近いのかはこれから注目したいところだ。ただ、日本のアベノミクスと同じで株価が下落したり、支持率が下落したりすると、大衆に気に入られようとして様々な政策を場当たり的に打って来る政権になるだろう。それがポピュリズム政権の宿命でもあり限界だからだ。信念のない政権には、世の中の流れに沿った経済政策しか打てない。
そんな中で、レーガン大統領もクリントン大統領もしなかったことをトランプ大統領は、実行しようとしている。それが「メキシコ国境に壁を創る」「日本車に38%の関税をかける」「不法移民200万~300万人を強制送還」といった「保護貿易主義」「反グローバリズム」の動きである。これらは選挙期間中に「アメリカファースト」を語るときに、最もアピールした部分だ。
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