トランプの懐刀が描く「米中戦争」の可能性 沖縄の米軍基地は「非対称兵器」の標的に

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在日米軍の撤退はあるのか? 日本の防衛に穴は?(写真:c Sipa USA/amanaimages)
「日本は米軍の駐留経費を全額負担せよ。さもなければ、米軍の撤退もいとわない」との発言を繰り返してきたドナルド・トランプ氏。そんなトランプ氏の政策顧問(Policy Advisor)であるカルフォルニア大学教授の書いた『米中もし戦わば』(原書名:Crouching Tiger)が日本の防衛省、自衛隊幹部の間で話題になっている。
著者であるピーター・ナヴァロ氏は、トランプ次期大統領の政権移行チームでも引き続き政策顧問を務め、経済、貿易、そしてアジア政策を担当している。元々の専門は経済学で、「中国の不公平貿易が、アメリカ経済とその製造業にどんなダメージを与えているか」を研究していた。その過程で、そうして得た経済力をもとに、中国が軍事力を増強し、南シナ海や東シナ海で様々な軍事行動を起こしていることに着目。それがこの本の出発点となった。
今年3月、日本の防衛省防衛研究所も中国の海洋進出を分析した「中国安全保障レポート」を出している。その執筆責任者である主任研究官の飯田将史氏が執筆した解説全文を掲載する。

かつて北海道を中心に展開していた自衛隊

日本の自衛隊がソ連軍による着上陸を念頭に置いて、北海道を中心にして展開していたのは、今は昔の話である。

現在、陸・海・空の各自衛隊は、東アジアの海洋でプレゼンスを強化している中国軍をにらみつつ、南西地域に重点を置いた展開を推進している。

本書は、近年の中国の海洋進出にともなって、変化する太平洋地域の戦力バランスを分析しながら、「米中戦争はあるか」「あるとすれば、どのように防ぐことができるのか」を、一般読者に向けてわかりやすく論じた優れた地政学の本である。

本書ではもちろん尖閣諸島をめぐる日中のつばぜり合いや日本に展開する米軍の基地(佐世保、横須賀、横田、嘉手納など)の脆弱性などが、米国の立場から書かれているが、日本の自衛隊がどのような戦略のもとに、中国の海洋膨張政策に対峙しているかにはあまり紙幅が割かれていない。本稿では、「解説」の形をとりながら、日本から見た防衛戦略について記したいと思う。

尖閣諸島周辺の日本の領海に、中国の政府公船が初めて姿を現したのは、2008年12月のことである。ほぼ同じころに、中国が島嶼(とうしょ)の領有権や海洋権益をめぐってフィリピンやベトナムなどと争っている南シナ海でも中国公船の活動が活発化していることから、この時期から中国の海洋膨張政策が、さまざまな衝突をうみながら、国際社会に立ちあらわれたということがいえるだろう。

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