トランプの懐刀が描く「米中戦争」の可能性 沖縄の米軍基地は「非対称兵器」の標的に

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尖閣諸島周辺に莫大な石油が埋蔵されている可能性を指摘する調査結果が、1968年に発表された。急速な成長の結果として、中国経済は、中東やアフリカから輸入される石油への依存を強めており、その輸送には、米国の制海権下にあるマラッカ海峡をとおらねばならない。この「マラッカ・ジレンマ」を緩和することも、中国が尖閣と東シナ海にまたがる海底に存在している石油の確保を目指す、理由の一つになっている。

尖閣の領有を実現するために

ピーター・ナヴァロ/ カリフォルニア大学アーヴィン校経済学教授 『米中もし戦わば 戦争の地政学』(文藝春秋)著者

その尖閣の領有を実現するために、本書にもあるようにまずは地図を書き換え、漁船を送り込み、サラミをスライスするように徐々に支配を拡大していくというのが中国の戦略である。

中国は、1996年の台湾における総統選挙に際して、中国が独立派と見なしている李登輝に投票しないようメッセージを送るために、台湾の近海に弾道ミサイルを撃ち込む演習を行った。これに対して、米国は空母インディペンデンスと空母ニミッツを中心とするふたつの艦隊を派遣し、中国は矛を収めざるをえなかった。

この時の蹉跌が、中国に、アメリカの空母打撃群に対抗する対艦弾道ミサイルなどの「非対称兵器」の開発を促したという本書の見方は的を射たものである。

ハッキングによって先進諸国から軍事技術の主要部分を盗み、そのコピーによって高性能な国産兵器をつくりあげる。黄海、東シナ海、尖閣諸島、南シナ海を内側に含む第一列島線への進出を、本書に書かれてあるように、移動式で精密攻撃が可能な弾道・巡航ミサイル、潜水艦などの強化によってなしとげつつある中国に対して、自衛隊はどのような対応をとってきているのだろうか?

冒頭で書いたように、もともと自衛隊はソ連による侵攻を念頭に置いていた。しかし、冷戦の崩壊と、経済成長にともなう中国の海洋進出が顕著になった2000年代以降、自衛隊の態勢は北から南へと重点をシフトしてきている。

福岡の築城基地に所属していた主力戦闘機F-15、約20機からなる飛行隊を沖縄に移転したのはそのひとつである。これは、東シナ海上空における中国軍機の活動が活発化していることに伴って、南西空域におけるスクランブル(緊急発進)の回数増大に対応するためである。また、陸上自衛隊は与那国島に沿岸監視部隊を設立しており、今後は南西諸島への地対艦ミサイル部隊の配置が検討されている。佐世保の西方普通科連隊を中心とした水陸両用部隊の整備も進んでおり、陸自は離島奪回能力を向上させつつある。

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