新たな国際金融規制におびえる銀行はどこ? 日銀のマイナス金利政策もリスク高める一因

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2018年から始まる新たな国際金融規制への対応を迫られる日本の銀行(撮影:尾形文繁)

「導入されると、商業銀行の基本的なビジネスモデルに影響を及ぼす可能性がある」。みずほフィナンシャルグループ社長で、全国銀行協会前会長の佐藤康博氏が、2015年5月の会長会見で強く言い切り、日本の銀行界が反対してきた国際的な金融規制案がある。

主要国の銀行監督当局で構成されるバーゼル銀行監督委員会が導入を検討していた、銀行が保有する国債や貸出金の金利変動リスクについての新たな規制(「IRRBB(銀行勘定の金利リスク)の基準」)の1案だ。

金利の上昇によって、国債や貸出金といった保有資産の価値が下がり、銀行のバランスシートが悪化することのリスクを低減させるのが狙いのこの規制。当初は、「第1の柱」と呼ばれる、各銀行に最低所要自己資本を求める自己資本比率規制の導入が有力視されていた。

日本の銀行が強く反対した理由

しかし、日本は「第1の柱による資本賦課を課すべきではない。中小企業への資金供給を抑制する要因となる可能性があり、実体経済に対する甚大な影響が懸念される」(全国銀行協会によるバーゼル委員会への公式コメント)と主張した。機械的に自己資本比率の向上を求める「第1の柱」案だと、中小企業向け貸し出しを減らすことによってそれを達成しようというインセンティブが働きかねないからだ。

最終的に、今年4月21日にバーゼル委員会が発表したIRRBB基準に、「第1の柱」が採用されることはなかった。

2018年から適用が始まるこの新規制は、金利変動シナリオを従来の2つから6つに増やし、それに沿って各銀行がそれぞれの内部モデル手法で保有資産の損失リスク量を計測(ストレステスト)。新たに、このリスク量の中核自己資本(Tier1)に占める比率の開示が義務化され、同比率が15%を超えた場合には、各国規制当局が必要に応じて資産売却や資本増強などを求めることになる。従来、この水準は総自己資本(Tier1+Tier2)の20%で、情報開示の義務はなかったので、規制はやや強化されたといえる。

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