マイナス金利に翻弄される「銀行」の深い苦悩 安全資産の運用ではもはや稼げない!
「マイナス金利に振り回されている」「営業の現場は完全な消耗戦」「預金金利はマイナスにしにくいのに、貸出金利はどんどん下がる。日銀はどう考えているのか」――。
1月29日に日本銀行が決定したマイナス金利政策を受けて、金融機関の現場からは日銀に対する恨み節があちこちから聞かれる。こうした状況だけを切り取ると、”銀行いじめ”のようにも映るが、当の日銀にそんな意図はない。なぜなら、預金を集めて貸し出しを行うという金融仲介機能が壊われてしまうと、元も子もないからだ。
民間の金融機関は通常、貸し出しや有価証券運用などに使っていないおカネは日銀に預けている。そこに置いておけば年0.1%の利息がついた。ところが、日銀はマイナス金利政策を導入し、民間銀行の預け入れたおカネの一部にマイナス0.1%の金利をつけると決めた。要は、「ウチ(日銀)に置いておくと損をしますよ。だから、集めた資金は寝かさず、貸し出しや投資へ積極的に回してください」というメッセージだろう。
運用の柱である国債の金利が消滅
日銀は3月15日の金融政策決定会合で「現状維持」としたが、実はマイナス金利政策に一種の”特典”を設けた。民間銀行が貸し出しを増やし、その資金を日銀から借り入れた場合、当該銀行は0.1%のマイナス金利を課される金額を減らせるというもの。貸し出しを増やした銀行にマイナス金利の影響を軽減する措置といえる。
もっとも、1月のマイナス金利政策を発表してから市場金利は一段と低下。2月上旬には10年物の国債利回りも初めてマイナスに沈み込んだ。銀行にとって有価証券投資の中核である国債の金利はほぼ消滅。日本では前例のない政策の導入で、安全資産では稼げない状況に追い込まれたわけだ。
突如ブチ上げられたマイナス金利政策にどう対応するか。銀行は焦りと危機感を募らせている。週刊東洋経済は3月26日号(22日発売)で『追い込まれる銀行』を特集。メガバンクから地方銀行、信用金庫まで、さまざまな金融機関の動きを追った。
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