マイナス金利に翻弄される「銀行」の深い苦悩 安全資産の運用ではもはや稼げない!
横の動きばかりを気にして金利競争だけを続けていると、銀行業界の収益は沈み込む一方だろう。生き残りを図るには、事業モデルをいかに再構築できるかにかかっている。
そこで参考になるのが、金融庁が昨年来行っている融資先企業1000社をメドにしたヒアリングだ。昨年12月、今年2月に公表された中間報告では企業側の本音が見て取れる。融資先からの”厳しい声”は、「支店の業績のため、期末に資金需要に基づかない短期間の借入を要請された」「顧客の方を向いて仕事をしておらず、本部の方を向いて仕事をしている」「保証料が高い信用保証協会を利用するより、銀行のプロパー融資で対応してもらいたい」といった具合だ。
時間も手間もかかる変革の覚悟
中間報告のアンケートでは、メインバンクを選んでいる理由として「当社や事業に対する理解」が最も多く、その回答数は「融資の金利」の約3倍。しかし、「アドバイスや情報が期待できない」という理由で、約3割の企業がメインバンクに経営上の課題や悩みをまったく相談していない、というアンケート結果も出ている。
一方、金融機関を” 評価する声”には「準メインだが、今までの金融機関と違い、融資先と一緒になって問題を解決し、成長していこうという姿勢がみられる」「当社(1次下請) だけでなく、3次下請先までヒアリングを行い、地域全体の業界分析まで行ってくれて、非常に有り難い」「事業内容や今後の方向性を理解した上でアドバイスや取引先の紹介を行ってくれる」などがある。751社のヒアリングを終えた段階で金融庁の評価は「厳しい声が多い一方、金融機関の熱心な行動を評価する声も一部に見られる」というものだった。
こうした生の声からも分かるように、時間や手間もかかるが、融資先の業界動向や事業性をいっそう深く分析し、経営改善支援などの取り組みを通じて成長融資を地道に増やすことがポイントだろう。ある日銀OBは「追い込まれた状況だからこそ、民間銀行が本来の”目利き力”を発揮していく必要がある」と強調する。
マイナス金利の導入で、日銀への預金や国債投資という安全な”逃げ道”は閉ざされた。銀行が迫られているのは金利競争ではなく、変革の覚悟なのかもしれない。
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