マイナス金利に翻弄される「銀行」の深い苦悩 安全資産の運用ではもはや稼げない!

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さらなる金利低下の影響を挽回しようと、銀行の営業員はすでに躍起になって動いている。

ある食品メーカー首脳は「これまで付き合いのなかった銀行から、次々とM&Aを提案されている」と明かす。銀行が持ち込んだ案件額を足し合わせるとゆうに手持ちの資金を超すという。だが、同社の財務担当役員は「資金調達や現預金の使い方は大きく変わらない」とにべもない。

中堅の部品メーカーの財務担当役員は「3月は長期借入金の一部を借り換えるが、3行、4行と提案が活発。金利は従来の半分になりそうだ」と話す。だが、ここも「設備投資は従来の計画通り。金利が安くなったからといって借入を増やすことはない」と言い切る。金利低下は歓迎しているが、あくまで事業計画ありきというわけだ。

「メガバンクの動きを注視せよ」

メガバンクの今までにない動きに、地銀も警戒心を高めている(撮影:尾形文繁)

首都圏に本店を置くある地銀の支店長は「掘り起こせる融資先はすべて掘り起こしている感覚。そもそも新規の資金需要がない。どんな産業が有望なのか教えて欲しい」とため息交じりに話す。だが、何もしなければ、競合が自分たちの取引先を奪いにくる。そして金利競争が過熱する。

マイナス金利政策の導入後、新たな動きも出ているという。「これまで訪問していなかった中小企業にメガバンクがアプローチしている。国内の利ザヤが低下する中で、メガとしても比較的利ザヤの高い中小企業に行かざるを得なくなっているのだろう。本部からは『メガの動きには注視するように』との指示も来ている」(前出の支店長)。

貸し出し競争で金利の更なる低下が見込まれる中、下げ余地のほとんどない預金金利の扱いも悩みのタネだろう。銀行は長年、貸し出し以上に預金が集まる「預金超過」の状況が続いている。国債の金利がなくなったことで、銀行の有価証券運用はそうとう行き詰まっており、「これからは預金の増加が金融機関の恐怖となりかねない」(アナリスト)からだ。

マイナス金利の幅が一段と広がった場合、いずれ「預金口座維持手数料」を設定する金融機関も出てくるはず。だが、先陣を切ると”悪者”扱いされかねず、「いつでも追随できるように準備はしておく」(銀行関係者)と、まさに横にらみだ。

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