優秀なあの人が「無能なリーダー」になる理由

諸葛孔明はなぜ「人材がいない」と嘆いたか

「自分で仕事ができる人」が有能な上司とは限りません(写真:プラナ/PIXTA)
「現場では優秀な実績を出していたのに、管理職に回ったらなんだか残念な人になってしまった」
あなたの職場にそんな人はいませんか。『自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書』の著者、篠原信さんは『三国志』に登場する主要人物の1人である諸葛孔明の半生を教訓に、「自分でやったほうが早いという病」の危険性を指摘します。

優秀な孔明が治める蜀から人材がいなくなった理由

私が中学生の頃、親が横山光輝のマンガ『三国志』を買ってきてくれた。ところが諸葛孔明が大活躍する24巻くらいまでしか当時は発行されていなかった(全部で60巻)。次巻が出るのを待っていられなかった私は、やむなく横山光輝『三国志』の原作である小説の吉川英治『三国志』を読むようになった。文字だけの本を一切読まなかった私は、まんまと親の策略にはまったわけだ。

中学生の頃に出会った『三国志』に登場する孔明は、それまでに見たこともないヒーローだった。マンガやアニメが好きだった私にとって、ヒーローというのは悪者を倒す強さとかっこよさを併わせ持つ、分かりやすい存在だった。ところが孔明は張飛や関羽などとも違って戦闘能力まるでなし。なのに何万人もの軍勢を指揮し、大勝利をおさめるという、それまでに見知っていたリーダー像、ヒーロー像とはまったく異なるものだった。

特に赤壁の戦いで魅せる知略の数々。敵の裏の裏をかく大天才ぶりに、私はすっかり魅了されてしまった。あんまり魅せられたものだから、文字だらけの本であるにもかかわらず、とうとう読了してしまった。それ以後、文字の本を読むようになったのだから、親の戦略は見事というしかない。

ところで、孔明には奇妙な矛盾があることに気がついた。劉備玄徳らと一緒に蜀を攻めていた時には、なかなか思うように勝利をおさめられず「蜀にこんなにも人材がいるとは」と驚いているシーンがあった。ところが孔明が蜀の支配者となり、最後の戦いの頃には、「蜀には人材がいない」と孔明が嘆いているのだ。人材がキラ星のごとくいたはずの蜀から、人材が消えてなくなってしまった。これはなぜなのだろう?

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