2018年度予算では、医療も介護も、大きなイベントが待っている。それは、診療報酬と介護報酬の同時改定である。予算づけの裁量の金額が大きくなると、メリハリも利かせやすく、予算を抑制しやすい。医療給付に10兆円、介護給付に2兆円強の予算を国から出しているだけに、診療報酬と介護報酬の同時改定は裁量の余地が大きくなる。だから、2017年度予算で社会保障費の自然増を遮二無二削減しなくても、2018年度予算で帳尻を合わせればよいではないか、という雰囲気が、今年の初秋にはあった。
しかし、診療報酬と介護報酬の同時改定が、社会保障費の自然増の抑制のターゲットとなると、医療や介護に広範な影響が及ぶ可能性がある。影響を受ける関係当事者も多くなる。「目安」の達成に向けて、2017年度予算での削減が手ぬるくなったツケは、2018年の診療報酬と介護報酬の同時改定できちんとカドをそろえて返してもらう、となってはシャレにならない……。そんな流れが作用してか、2017年度予算では、社会保障費の自然増を5000億円にとどめるべく、1400億円分の圧縮に目途が立ちつつある。
では、どのような医療介護費の圧縮が行われる見込みなのか。その成否について、現時点での下馬評的私見を記そう(今後の情勢いかんでは、その評価は変わりうるし、最終的な成否と異なっても「下馬評」なのでご容赦頂きたい)。
凡例は…◎:実現可能性が高い、○:一部のみ実現か実現しそうだが予断を許さず、△:五分五分、×:実現可能性が低い、とする。
高齢でも高所得者なら相応の負担を
<医療>
◎ 70歳以上高所得者の自己負担額の上限の引き上げ(高額療養費制度の見直し)
急に病気になって医療費の自己負担が重くなることを緩和するため、家計の負担能力(つまり所得)に応じて、医療費の自己負担を抑える上限額を設ける仕組みがある。高額療養費制度である。現在、70歳以上の高齢者は、現役世代と同じ所得水準であっても、その上限額が低額に設定されている。これを改め、70歳以上で住民税が課される年収370万円以上の人の負担上限を、今の月4万4400円から、69歳以下の同水準の所得の人と同じ月5万7600円に引き上げる案が出されている。世代間格差是正のためには、不可欠な策である。
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