夢の抗がん剤「オプジーボ」が半額になる衝撃 年間3500万円の価値はどれほどのものか

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3500万円する小野薬品工業の抗がん剤「オプジーボ」。2017年2月に半額まで値下げすることになった

年間3500万円。この超高額の抗がん剤「オプジーボ」(一般名「ニボルマブ」)の公定価格(薬価)が、2017年2月から”半額”に引き下げられることが決まった。11月16日に開かれた厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で、2017年度の50%引き上げが了承された。

オプジーボとは、京都大学名誉教授の本庶佑(ほんじょ・たすく)氏が開発を牽引し、日本メーカーの小野薬品工業が世界に先駆けて発売した、がん免疫療法の治療薬だ。100ミリグラム約73万円で、患者一人につき月額の薬剤費が約290万円、年間なら約3500万円にもなる。これだけの額で、果たしてどれほどの妙薬なのか。医療業界ばかりでなく、世間一般にも注目を集めた。

類似薬がなく、希少性が高い薬

日本の場合、薬は、ヒトでの臨床試験(治験)で効き目や安全性が確認され、厚労省の製造販売承認が得られた後、中医協で薬価が決まる。各薬の薬価算定理由は公開されており、欧米諸国では製薬メーカーと保険者など支払い側の交渉や市場価格に基づいて決まるのに対し、日本では透明性の高いルールがある。それが薬価算定方式で、「類似薬効方式」と「原価計算方式」に大別されるが、前者は既に類似した薬効の薬がある際、それと比べることで薬剤費全体のパイを拡げないよう、キャップをはめる形で決められるのだ。これは社会保障費の拡大を抑えたい政府の意向でもある。

類似薬のないオプジーボは、後者の原価計算方式で決まった。そもそも、生物学的製剤(遺伝子組み換え技術で製造される薬)で、原価は高い。世界で初めて承認を取得したことなどから、平均的な営業利益率(16.9%)の6割増しとなる27.0%まで加算された。

さらに薬価を押し上げたのは2014年7月、まず悪性黒色腫(メラノーマ)という、希少で難治性の皮膚がんの薬として承認されたためだ。メラノーマの発症数は国内で年間1500人弱。オプジーボの適応は、「根治切除不能な悪性黒色腫」で、手術や放射線治療を望めない患者に限っている。当初、発売後5年間の市場規模は、ピーク時の2年目で、患者470人・販売額31億円とはじかれたのである。

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