夢の抗がん剤「オプジーボ」が半額になる衝撃 年間3500万円の価値はどれほどのものか

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現状、効き目がある人の割合(奏効率)は、2~3割にとどまる。前述した分子標的薬は遺伝子などを調べて、あらかじめ効くだろうと予測される人にのみ投与することができる。

オプジーボは今のところ、そうした事前診断をできず、やめ時を判断するためのバイオマーカー(血液中などの指標になる物質)もない。臨床現場では「誰に効くか分からない」「(効く人も効かない人も)いつまで使い続ければいいか分からない」という声も聞かれる。また早期から使えず、既に状態の悪くなった患者に用いることも、奏効率を下げる要因につながっている。

例えば、ウイルス性肝炎の治療薬である「ソバルディ」「ハーボニー」(ともにC型肝炎薬)も、月額百万円以上かかる高額薬剤として話題になったが、3カ月服用することでほとんどの人が肝炎ウイルスの排除に至る。オプジーボにはそうした切れ味はない。今後のがん免疫療法は、精密な診断に基づき、患者やがん細胞の状態の差を考慮した”個別化治療”へと向かわなくてはならないのだ。それには遺伝子情報をはじめとする、ビッグデータの解析が不可欠とされる。

薬価にも費用対効果を採り入れる動き

一方で、費用対効果を薬価にも本格的に採り入れようという動きもあり、オプジーボやソバルディ、ハーボニーも、俎上に載せられている。ここでいう費用とは、個人の負担でなく、国全体の負担だ。日本には薬価のルールブックがあっても、そこに費用対効果という視点はなかった。

が、中医協には2012年、費用対効果評価専門部会ができた。2016年4月には7つの薬が検討対象になって、メーカーに対し分析データ提出を求め、専門家が妥当性を検定、次回の薬価改定で価値に見合った価格に是正していくことになっている。

その検証には「質調整生存年(QALY)」と呼ばれる指標を使う。QALYは、薬によって延びた生存年数に、その間の生活の質も加味したもので、英国などで利用実績がある。英国では医療費はすべて税金で賄われ、費用対効果への意識は高いが、医療サービスの内容に地域間格差があったことで1999年に国立医療技術評価機構(NICE)が創設され、薬の費用対効果を測り、使い方の推奨を提言するようになっている。

基準は、「1QALY(健康で活動的に1年生きている状態)当たりの費用が、2万~3万ポンド(約250万~380万円)以下であれば、費用対効果として良好。それ以上なら税金の賢い使い方とは言えない」、というもの。単なる総医療費の削減ではなく、定められた財源の中で、より効率的な治療の提供を目指すわけだ。

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