夢の抗がん剤「オプジーボ」が半額になる衝撃 年間3500万円の価値はどれほどのものか

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日本の費用対効果評価専門部会の参考人でもある国際医療福祉大学薬学部の池田俊也教授は、「日本では、患者や社会にとってどれぐらい価値があるのかという視点で、薬価が定められていなかった」と指摘する。2018年度からは、高額な薬剤や医療機器の価格は、費用対効果指標に基づく見直しが行われる予定だ。

英NICEは最近、高額の抗がん薬を中心に評価し、約半数を「費用対効果の点から非推奨」としている。オプジーボも肺がんについては、原案段階では費用対効果が悪いため「非推奨」となっており、今後、大幅な価格引き下げがない限り、非推奨となる可能性が高い。

現在、オプジーボの投与後に早期に治療効果を判定するバイオマーカーの開発は、京都大学をはじめ盛んに進められている。使い方についても実績が積み上がり、使うべき人やタイミングが分かってくれば、これから奏効率は上がり、費用対効果も向上するはずだ。

がん免疫療法は1950年代末に着想されて以来、様々な努力が試みられてきたが、めぼしい成果は得られなかったところに、オプジーボがその扉を開いたことは間違いない。世界の製薬メーカーは、免疫チェックポイントを標的とした、多くの薬剤を開発中である。

ノーベル賞の山中教授も注目

2016年のノーベル生理学・医学賞の受賞に先立ち、日本人の受賞の可能性について問われた京都大学の山中伸弥教授は、真っ先に「PD-1」を挙げた。がん治療における抗PD-1抗体の発見は、感染症におけるペニシリンにもたとえられる。iPS細胞発見で2012年に同賞を受賞した山中教授が、「がん治療の新たな光」と評したように、人類への貢献という意味ではプライスレスな薬とも言えるかもしれない。

オプジーボは様々な問いかけをわれわれに投げかけた。日本の国民皆保険制度は世界的にも優れた仕組みだが、限られた財源の中でより効率的な医療を提供するなど皆保険維持のために何をすべきか、国民も考えなくてはならない時期に来ている。

塚崎 朝子 ジャーナリスト

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つかさき あさこ / Asako Tsukasaki

東京都世田谷区生まれ。読売新聞記者を経て、医学・医療、科学・技術分野を中心に執筆多数。国際基督教大学教養学部理学科卒業、筑波大学大学院経営・政策科学研究科修士課程修了、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修士課程修了。専門は医療政策学、医療管理学。

著書に『慶應義塾大学病院の医師100人と学ぶ病気の予習帳』『新薬に挑んだ日本人科学者たち『世界を救った日本の薬 画期的新薬はいかにして生まれたのか?』(講談社)、『iPS細胞はいつ患者に届くのか』(岩波書店)ほか。

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