"公務員ランナー"川内優輝のマネジメント力

限られた時間と環境の中で”成果”を上げる方法

「僕は実業団選手のように多くの練習時間を確保できませんし、朝練習もやっていません。練習量も少ないです。強度の高いポイント練習も水曜日と土曜日の2回だけ。水曜日がスピード練習(400mや1kmのインターバル走など)で、土曜日が距離走(30~43kmのペース走やビルドアップ走など)というのが流れです。あとの5日間はすべてジョグになります。ポイント練習は週に2回だけですから、そのときはいつも以上に集中して取り組んでいます」

実業団選手は恵まれた環境の中で、月間1000km以上の距離を走る選手もいるが、川内の月間走行距離は600kmほど。しかも、練習場所は自宅周辺、スタッフなしという非常に“費用対効果”の高いトレーニングをこなしている。

「実業団選手は過去の成功体験から、かなりシステマチックにトレーニングをしていると思いますが、人間にはそれぞれ個性がある。僕のようなやり方の選手が出てきてもおかしくない。また、仕事に集中することで、競技にも集中できる。効率のよい練習というのは、仕事のおかげで身に付いた部分も大きいです」

弱小校で出会った、常識破りの練習法

少ない練習量で日本トップクラスのマラソンランナーになった川内を、“天才タイプ”だと思う人がいるかもしれないが、川内自身は「才能なんてなかった」と言う。実際、埼玉県の強豪校・春日部東高校時代は故障に悩まされたこともあり、県大会でも上位に入ることができなかった。そのため、箱根駅伝の常連校をあきらめ、陸上では無名の学習院大学に進学した。

普通なら、その時点で競技への“本気度”が徐々に低下していくが、川内は違っていた。大学で出会った新たな練習スタイルが人生を変えることになる。

高校時代は朝練習を行い、ポイント練習も週に3~4回あったという。しかし、学習院大では朝練習がなく、ポイント練習も週に2回だけだった。津田誠一監督からは「(強豪校の練習と)競うことはない。頑張るな、頑張るな」と声をかけられて、川内は練習を継続してきた。トレーニングは「速く走る」ことではなく、「一定ペースで押していく」ことに重点が置かれていた。

「今、思うと、大学で強くなる方法に気づいたことが大きかったですね。大学での練習は高校時代と正反対だったので、当初はなかなか信じることができませんでした。でも、少ない練習量で高校時代の記録を超えたことで、この練習は正しいと思うようになったのです。

高校では故障に苦しんだので、大学では故障だけはしないように気をつけました。継続した練習を積むことが何よりも大切ですし、ゆとりのある練習が心に余裕をもって取り組めて、レースにもしっかりと集中できますからね。

強豪校の練習で伸びなくても、自分に合った練習スタイルさえ見つけることができれば成長できる。僕はより多くの選手に可能性を追ってほしいこともあり、いろんなことに挑戦しています」

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